第33話、国王が来るって……冗談じゃねえよ

「でも、ここの仕事が、そんなに人気だったとはビックリよ」


「バーべキューも良かったですし、新作を試食させていただけたり、今回だって最初のお風呂を私たちにまで使わせていただいて……」


「仕事は、他と比べて大変ですけど、やりがいがあるので楽しいですしね」


「そうそう、売り子のできるメイドなんてここしかありませんから」


「それに、ご主人様の目を意識しないで働けるのもいいですよね」


「その分、お客様の目が厳しいけどね」


「言えてる……

時々、身内が来るじゃない。

あれって緊張するわよね」


「そうそう、身内の目って、周りと比較するじゃない」


「だよね~」


女だけのお風呂って、こんな話で盛り上がっています。




「えっ、王様を風呂に入れろって……」


「ほら、支店長が時々入ってるでしょ。

スターリン様って、元宰相だから、王様のところで自慢しちゃったんですよ」


「それで、なんでうちの風呂に入りに来るのさ……

城に風呂を作ればいいだろう」


「城に作るにしても、ここよりも良いものでないといけないわけで、王様自ら来たいと……」


「いや、迷惑ですよ」


「そういわないでくださいよ。

王妃様も楽しみにされていますので」


「えっ、一緒に入るつもりですか」


「いえ、王妃様は側仕えのメイドたちと、王様は各局長とお見えになられます」


「そんな、困らせないでくださいよ」


「困っているのはこっちですよ。

ああ、夜23時以降ならいいですよ。

朝まで貸し切りにしてあげます。

でも、うちのメイドたちは一切対応しませんから」


「そんなこと言わないで、明日一日貸し切りでお願いしますよ」


「明日って……もう決まってるんですか」


「はい……」


「で、使用料は?」


「金貨10枚でいかがでしょう」


こうして、風呂の貸し切りを押し切られてしまった。




「すまない。

明日、王と王妃たちが風呂に入りに来ることになってしまった。

悪いが、手分けして対応してほしい」


「すごいことですよ。

両陛下が一般の男爵家に訪問されるなど、考えられません。

メイド一同、全力で対応させていただきます」


「風呂に入ってから、食事もされるそうなんだが……」


「食事まで……

前代未聞ですよ。メイド一同、腕の見せ所ですね」


こうして、国王を迎えることになった。

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