第18話、ハンバーガー

「アルコールを作るだけなら、サトウダイコンの搾りかすが使えるんじゃないでしょうか?」


萌にいわれて気が付いた。


早速、サトウダイコンを一本すりおろし、汁を絞って残りかすで発酵させてみる。

5日、毎日シェイクしてみたら、うまいことアルコールにできたようだ。


さらに、その搾りかすを水に溶かして紙を作ることができた。


「すげえなサトウダイコン!」


「ああ、ここまで無駄なく使えるとはな。

ポットスチルもできたんだが、どうやって温度を調節するかだな」


「アルコールの沸点って確か80度くらいだったよな」


「俺も詳しい数値は覚えてないが、80度を少し下回るくらいだったと思う」


「温度計なんてないしな……」


「沸騰させないように注意しながら、蒸留した量で判断するしかないだろう」


「やっぱ、それしかないか」


原液のアルコールが10%前後だとして、水を沸騰させないようにして100リットルの原液を蒸留すれば10リットルのアルコールがとれる。

余分にみて、20リットル。これを繰り返していけば高濃度のアルコールになる。


「どっちにしても、サトウダイコンがそれなりの量収穫できてからだな」




俺はショウガも見つけ、無事ショウガ焼きを食べることが出来た。


「うめえよ、何でこんなにウメエンだ」


「うん、おいしい」


ウシもそれなりに確保できたので、いよいよアレに手を出し事にした。


「ハンバーガー作りをやってみるか」


「ええ、そろそろ頃合いですよね」


「足りないモノは?」


「全部揃ってますよ」


ハンバーガーを作り、メイド達に試食してもらう。


「美味しいです。こんなパンがあるなんて」

「ソースが絶妙ですね」

「レタスのシャキシャキ感がすごいです」


メイドも増員してある。

何しろ、売り子だけでなく、仕込みもやってもらっているし、恭介や萌専属のスタッフもいる。




全てが順調にいくかと思われた矢先に事件が起こった。


「仁さん、智代梨さんが」


「どうした」


「治療中に倒れました」


俺は治療室に駆け込んだ。

智代梨はベッドに寝かされていた。


「何があった」


「患者が出ていったと思ったら、中で智代梨さんが倒れていたんです」


「患者は?」


「兵士ですが、記録はとっていません」


「智代梨……」


智代梨は夕方になって目を覚ました。


「何があったんだ?」


「えっ、……あっ……、治療が終わったら……、急に抱きついてきて……」


「患者がか?」


「胸とか触られて……、体が硬直してしまって……、キスされたら……なんだかわからなくなって」


俺はオオカミの姿になって智代梨についた匂いを確認した。

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