メモリアルパラダイス 君色ノイズ

第1話 この街に溢れるあらゆるノイズ

【こんばんわ。今週も始まりました。川原輝(かわはらひかり)がお送りする[君色ノイズ]。今夜も1時間お付き合いください】


その輝の声に、耳を傾けているのは、飛田大樹ひだひろき、16歳。

何処にでもいる、男子高校生だ。

ただ、ラジオが好きだった。碌に宿題もせず、深夜、ラジオに耳を傾けるのが最高のひと時だった。


そして、その大樹が先々週で終了したラジオ番組に代わり、新しく始まる[君色ノイズ]を先週初回から聴いていて、かなりのファンになった。

この番組の魅力は、”柔らかく透き通った輝の声”と、優しいトーク、そして、

番組冒頭で新パーソナリティーが、

「あなたのノイズ聞かせてください。夜が明けたら、あなたの頭に優しいメロディーが流れていますように」

と言う言葉が心地よく、大樹は一気にどハマった。

そして、次の週の月曜日は深夜1時にタイマーをセットし、〔君色ノイズ〕では、初めてラジオにメッセージを送ろうと決めていた。

自分のメッセージが読まれるのか、読まれないのか、[君色ノイズ]が始まると、ドキドキしながら、聴いていた。


【では、まず今夜の1通目は”夜中ど真ん中。”さん16歳の方のメッセージから】

(マジ!?俺じゃん!!すげー!!)


大樹は、色々なラジオ番組に投稿してきたが、1回も読まれたことがなかったから、めちゃくちゃ嬉しかった。


【〈初めまして輝さん。輝さんの声や、トーク、アドバイスが優しくて、初回から聴いて、一瞬でファンになりました。

僕のノイズは、今、好きな子がいるんですが、その子を見ているだけで、ノイズが流れます。好きだな…どうやって話そうかな?と思いつつ、一日一日が見つめているだけで終わってしまいます。何か良いアドバイスもらえませんか?〉


夜中ど真ん中。さん、初メッセージありがとうございます。夜中ど真ん中。さんのノイズ、きっと誰もが聴いた事のあるノイズでしょうね。

私にももちろん流れた事のあるノイズです。でも、このノイズは意外にとても愛おしいノイズじゃないですか?

このノイズがあるから”好き”が分かるし、”大切”が分かるんじゃないでしょうか?このノイズが、うるさいくらい頭に流れてるうちに、何処かに行ってしまう前に、勇気を出して欲しいと私は思います。頑張ってください。

では、そんな、夜中ど真ん中。さんにはいつか、夜中ど真ん中。さんにもこう言う未来がありますようにと言う意味を込めて、この曲を。

米津玄師で”アイネクライネ”】


曲を聴きながら、大樹はアイネクライネの歌詞をスマホでググった。


「わー、何この良い曲!めっちゃ遠藤えんどうに名前呼ばれたいし、呼びたい!」


と、言うのも、大樹は高校入学して、2か月、すでに、どちらかと言えば内気な感じの、容姿は眼鏡に1つ結びの、奥手そうなでも、素直そうな果実かじつの事が好きだった。


それなのに、果実とは友達になるどころか、挨拶さえまともに出来ていなかった。


そんな、希望でしかない、けれど、優しい輝の声で紹介されると、夢が叶ったかの様に、嬉しい気持ちになった。


それに、輝は【あなたのノイズをメロディーに】と冒頭で言うのに、今日のように、必ずしも”ノイズ”を否定しない、そこがまた良い、と大樹は思った。

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