第8話
私が物語をもっと羽搏かせ、ネットの海に流そうと思っているこの子。
これを書いている今、2021年のお正月も私は彼女を普通に着ながらこたつで書いている。
2020年の年越しも彼女と一緒に向かえた。
マイクロファイバーの肌触りのいいバスローブの部屋着の上から羽織り、
裾を一番下から持ち上げて折って腰のあたりで巻いてから、
300円のもこもこのウェストウォーマーを帯代わりに足の下から持ち上げただけでおうち着物も部屋着のまま完了だ。最近はだいたいこのスタイルでこの子のレベル上げをしている。
先程から説明してきた通り、蓄積して経験値が積める上、身に着け続けている属性というものは人間性や正体に融合するものなので、それらの原理をすべて応用すると神の方程式を解いた私が付喪神のこの娘を着続ければ彼女はより高みへとレベルアップすることになるだろう。
それが楽しみでこうしている。
あと正絹なのでまじであったかい。私の手から離れることは想定していないので別にこの子を着たままごろ寝してもポテチを食べても私の自由。もちろんちゃんと汚れないようにはしているが。
そして、神のレベルアップといえば知名度と信仰心。妖怪のレベルアップといったら畏怖でそれもようは知名度だ。信仰は親交なのだから、この娘が辿ってきた人生を物語にしてコンテンツにして消費してもらうだけでも私たちはレベルアップしていく。
メカニズムを知り尽くしているからこその、現実的に学術的に知っている神性の付与の仕方だ。
自分自身でも好んで買うようになり、もう何十枚にもなった着物のコレクションの中で一番のお気に入り。
毎年必ず着るきもの。引っ越して収納スペースも増えたウォークインクローゼットのあの小さなハコのなかで私に愛されている子。
いとしごだ。
元々から、宝物。
多くの人に愛されてきた子。
きっとだれにとてもそうだっただろう。
そして今は、クルーシュスチャ方程式を解いた者の宝物であれば、それはアーティファクト。ゆくゆくは聖衣レベルまでレベルアップさせてあげよう計画が静かにあたためられ始動している。
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