着物と狐とあやかしの話
@NanOoo_87
第1話
私は23から着物を始めた。
元々浴衣は好きで、多い年でひと夏に10回や12回着ていた。
おさがりの浴衣が7枚以上あったからだ。
ある一定の年齢を超えた時から、彼女は私に無限に衣服や鞄、装飾品から菓子類、高価な和装用品から消耗品のタイツ類まで本当に膨大な量を貢いでくる存在になった。そういう方向に彼女の中のなにかのギアがシフトした。私はそれをわかったうえで表面的に受け止め利を得ることとし、おかげでただでさえ幼少時代のあれこれの反動から来ていた収集癖の持ち主の6畳の部屋は地獄の様相を呈していったがそれはまた別の話だ。
悪賢くも愛憎をこじらせながら先に大人になった私は当然大人の目線から、こどもの彼女に君がしていることは無自覚だとしたらこういうことだよ、それでも私は『寛大で』『偉い子』な『わるいやつ』だから受け取るけどね、それが君にとって『いい子』だろう、どう思うと教え続けたが無垢な彼女はそれを理解することや自覚することがあったのかなかったのか、まあどちらにしても同じことだっただろう。
今となっては、それがこうして真冬の私をあたたかさで包んでいる。
彼女たちの愛の結晶だ。
ある一定の年齢、そのころ私は自我を確立していた。
帰りのバスで、ごくたまに遅くなり真っ暗になるとバスの窓は鏡になる。
暗い外よりもその夜のバスの窓に映る高校デビューを果たして垢ぬけて来た自分を見て、
ああ、できあがってきたな。これが自分か。いいかんじだ。できてきた。
そう思いながら髪を触り化粧を見て服と鞄を正すのがあの20分弱の過ごし方だった。
あの頃どこに行くにも肌身離さなかったのはipod nano。
ミュージカルな日常だ。
ハイスクールミュージカル並の自由な私立校だった。
毎年四日間あった文化祭は1年がパイ投げで二年がトロッコジェットコースターで三年はメリーゴーランドだった。すべて教室の中でリアルに"組んだ"し"稼働させた"。あとはカジノやカクテルバーやってた組も同年代にあった。ジェットコースターは二クラスぶちぬいたのか一回廊下経由して繋げた長さの組が文化祭のなにかで優勝してたが、ここもあまりリアルが小説より奇なりなのであのバレリーナを輩出した我らが高校の思い出も別の話だ。脱線する。
まあとにかく、そんな日常の中で大人になっていた15歳から私は山ほど和装用品を持っていた。
当時は戦国系がブームかつブームが来る直前からはまっていたのでとにかく浴衣を着てどこかに行った。
その延長だ。浴衣を着るため、その目的で夏祭りに行っていた。
和装を始めたきっかけはその夏祭り。
ある夏、私はハンドメイド関連でかわいらしい狐面をついったーで見た。
それを小さな公園の催しで売っている。
ちょうどひまだ。調べてみると電車で一時間半程。
ふらっと行ってみてもいいだろう、まあこれはこれだけばずっているし買えても買えなくても、とりあえずちょっとひやかしに、夏祭りだからな。ああフォロワーも行くらしい。どこかで会うかもしれないな?
そんなかんじでふらっとやってきた小さな公園。その花の園。それが私が一生着ることなどないと思っていた着物をここまで極めさせることになったきっかけの場所だ。
すべて省いて最初から紙幣なもう片方とベクトルが違うだけで貢ぎ癖は同じな元似た者同士のおしどりどもの片割れだった彼女は昔から和装が好きだった。だから私は、あのころまで、あの夏祭りに行った年までの認識では、どちらかといえばあの業界はきらいだったほうだ。
気取ってると思っていた。きるもの、服と同列の存在のくせにあれをしろこれをするなとなにさまかの気持ちでいたんだ。着物よりドレス派だった。浴衣は楽しいしらくだし、遊びに誘う名目になるからよいが、着物と言う文化そのものが敷居の高さとあの上流中年女性特有のあのいやなコミュニティと切っても切れない印象がまだあったからだった。
私は中学生から、リアルロリータ年齢からゴスロリファッションもそれなりに好きで楽しんだが、着ているものによってできることが制限されたり行動の変化を求められるのがきらいだったので本当に何を着てどんな場所にいようとしたいようにふるまった。それが、きものではできないだろう、そういう理由でまあ嫌煙していたんだ。今よりも和洋折衷和装のブームが来ていなかったからでもある。戦国モノにはまってはいたが私のはまっていた戦国はビームもでるしバイクもあるしピザもあったしなんなら宇宙にも行ってたからそういうかんじではない。ぎりぎり和ゴスと浴衣アレンジで止まっていた。
その意識を塗り替える、というよりも、そんな前提を飛び越えさせたのは、
最近私が人間の枠まで飛び越えることになったあの作品の時と同じ原理。
神だ。神々の余興を浴びた。
それに魅入られた。
『欲しい』と強く思った。欲だ。
その二つがいつだって私の言動力。
糧となってきた。
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