禁断の恋

ハル

第1話 先生になる夢

私、雨月 綾香(あまつき あやか)23歳。夢に迄見ていた先生になりました!


代理としてだけど初のお仕事。


私が前夜、下見に行った時の事だった。




バリーン


シーンと静まり返っている校舎から窓硝子の割れる音が響き渡る。



ビクッ



そして再び ―――




バリーン


窓硝子が割れる。




すると、1つの人影に遭遇し ―――



「ちょっと!何して……」



チクリと指に痛みがあった。




「……っ!」


「…大丈夫か?」と、男の子の声だ。



「…平気…大きい傷じゃないから気にしないで……ともかくこういう事するのは良くない!」



「………………」



人影は逃げるように走り去った。



顔は分からなかったけど、ここの生徒なのか他高生なのかは分からず仕舞いで次の日を迎えた。



「共学なんだ…私の学生の頃を思い出すなぁ~」



≪今時の中高生って問題起こすの良く身受けられるんだよね…気合い入れて頑張らなきゃ!≫





「えー、今日から、大野先生の代理としていらっしゃった雨月 綾香先生だ」



教頭先生が軽く紹介した。



「美っ人ーー」と、男子生徒の一人。


「先生、彼氏はいるのー?」と、別の男子生徒。


「えっ?」


「こらっ!そういう話は後に……」




ガラッ

引き戸が開く。




「こらっ!三樹(みき)っ!遅刻を堂々と…」

「良いだろっ!?色々と忙しいんだからな!」

「全く…!」



「よー、おはよーさん」

「オス」

「おはよ!」

「おうっ!」



友達と思われる男子生徒達に挨拶を交わす遅刻してきた男子生徒。



≪友達はいる感じなのね≫



「先生…彼は、多少問題生なんですよ。成績はトップなんですけど、この様に遅刻を平気でしてくる生徒です」


「はあ…」



コソコソ話す中、ため息交じりの返事をするものの多分、何かしらの理由あっての事だろうと思いつつ深くは気にも止めていなかった。


私が学生の時、そういう先輩や同級生がいた事を何人も知っているからだ。


彼らは逆に将来、凄い大物になっている。


そんな同級生や先輩がいる事も知っている。




「三樹、今日から雨月先生が、ここの担任をされる。問題起こすんじゃないぞ!」


「俺、限定かよ!」

「出だしから、こんなんじゃ目に見えているだろう?」


「いや、教頭先生、それはどうかと思いますけど」


「えっ?しかしですね先生、彼は遅刻の常習犯なんですよ」


「遅刻常習犯だとしても、学校に来てくれている事が何より良い事じゃないですか?不登校だと心配ですけど…ポジティブにいきましょう?教頭先生。後で詳しい事は聞きますので」



私は教頭先生を追い出すように教室から出した。




「はい、と、言うわけでご紹介の通り、私の名前は、雨月 綾香と言います。みなさん宜しくお願いします」



「ねえ、先生、彼氏は?年齢は?」

「いません。ちなみに23よ」

「嘘、嘘。美人なのにいない訳ないじゃん!年も良い年齢だし」


「実は女好き?」

「私はノーマルよ。はい、取り合えず出席とります!」


「ねえ、先生、いつ女になったの?」

「えっ?直球質問ね?」

「ねえ、いつ?」

「先生はね~…内緒♪はい、出席とりますよ~



「なぁなぁ、もう女になってるよな?」

「そりゃそうっしょ?23だもんよ?なあ、有哉(ゆうや)」


「処女」


「えっ!?」


「いやいやいや、まさかっ!有り得ないっしょ!?」

「嘘だろっ!?だって、23だぜ?」

「あんな美人なのにあれはモテモテコースのはずだぜ?」


「モテモテ…コースねぇ~…その分、性格悪いんじゃ?」


「あー…誰かさん みたいに?」

「誰かさんて誰だよ!俺か?」

「ピンポーン」



「はい、そこ!女の話をしているのか知らないけどおしゃべりは後でしてね」

「はーい」



素直で良い子達のようだ。



「やっぱ、大人の女性だよなぁ~」

「色気感じる~」

「スタイル良いし」

「そうそう。顔良し、スタイル良し。文句なしじゃん?」


「お前ら変な気、起こすなよ」

「あー大丈夫、大丈夫」

「全く」




その日の放課後 ――――




「ねえ、綾香先生は本当に彼氏いないんですか?」



クラスの女子生徒達が尋ねる。



「いないわよ」

「本当に?」

「何か意外だなぁ~」

「そう?」

「だって文句なしの容姿じゃないですか~」



彼女達と色々と話をし、彼女達と別れる。




「はあ~…一日目、終了。明日も頑張らなきゃ!」



「何を頑張んの?」



ビクッ

突然の声に驚く私。


視線を向けると、視線の先には、クラスの男子生徒が瞳を閉じ腕を組んで出入り口のドアに寄り掛かり立っていた。




「あれ…?…君は…通称、問題児生の三樹君」

「…通称…問題児生は余計だろ?」

「あーごめんなさい。気悪くしたなら謝るわ。ごめんなさい」


「別に気にしないし」

「そう?」


「なあ、昨日、学校来たろ?」

「えっ?」

「夜」

「夜?」



グイッと手を掴まれる。



ビクッ



「この手の傷、昨夜、硝子の破片刺さったんだろう?酷くなかったからリバテープで済んだんだろう?違うか?」


「それは…まあ…」


「悪かったな!大丈夫だったか?念の為、病院行った方が良くないか?」


「大丈夫だから」

「それに窓硝子の件、警察に突き出しても良いんだぜ?」


「えっ?」


「窓硝子、私のクラスの生徒がやりましたって…俺の名前出せば良いじゃん」


「証拠もないのに?」


「えっ?」


「あなたが言う事だから確かにあなたがやったかもしれない。だけど、私はあなたの顔を見てもいないのに犯人扱いする気なんてないわよ」




グイッ


私の手を掴む。




ドン


壁に押し付けた。




ビクッ



「ちょ、ちょっと!な、何?」




スッと離れる三樹君。



「…三樹…君…?」



三樹君は、何も言わず教室を後に出て行き始める。



「………………」



私はズルズルと腰をゆっくりとおろしていく。



「…怖かった…」





スッと私の前に人影が視界に入る。



「なあ」



ビクッ


顔を上げる視線の先には、出て行ったはずの三樹君の姿。



「…先生…もしかして男苦手?」



ギクッ


「えっ?ち、違…別に平……」




スッと片頬に触れる。



ビクッ

肩が強張る中、目を閉じる。



「………………」



「過去に何があったかは知らねーけど…それじゃ先生務まんねぇだろ?辞めたら?」


「わ、私は夢だったの!」


「………………」


「ふ~ん……そっ!せいぜい頑張りな!雨月 綾香先・生。それとも……俺が辞めさせてあげようか?」


「えっ!?」


「問題起こせば、即解雇だろ?」

「や、辞めてっ!」



「………………」



「……お願い……」


「………………」




三樹君は、教室を後に出て行った。
























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