出世綾子の場合

 ずっと五歳年上の幼馴染みのお兄ちゃんのことが、出世綾子しゅっせあやこは好きだと思いこんでいる。


 少女にありがちな恋に恋にする状態だと恋する本人に論破ろんぱされても友人たちから、綾子はお子ちゃまだからねとわかったような物言いされても綾子には伝わらない。


 夢見る少女だとか言われても、お兄ちゃんが誰か他の女性といればやきもちを焼くし、この気持ちは恋じゃないのならなんなのさと綾子はいつも思っている。


 そんな綾子の前に現れた川沿いにある洋館には川越音楽堂と書いてある。


 庭には色とりどりのきれいな薔薇が咲いており、お店の前においてあるメニューは普通の喫茶店で、高校生の綾子でも十分利用できそうである。


 ともかく、くさくさしていた綾子は気分転換もかねてお店のドアを開く。

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