10万円の使い道

クスノキ

9月5日(金)20:00 都内アパート

四畳半の畳の上、男が通帳を眺めています。一番下の行にはこう書いてあります。


09-03  100,000振込   日本政府  2234,073


男は通帳を閉じるとスマートフォンを手に取り、メッセージアプリを開きました。


「私とあなたの寿命は9月7日、日曜日の午前3時までとなりました。最後の一日を一緒に過ごしませんか?」


数分待っていると、既読が付きました。更に数分後、返事が返ってきます。


「?」


男はさらに返事を返すと、スマートフォンを置いて夕飯の支度をはじめてしまいました。返信の内容はこうです。


「明日の午前9時、いつもの喫茶店で待っています。詳細はその時に。」


このように約束をすれば、相手は必ず時間きっかりに現れることを男は確信していました。就寝するその瞬間までスマートフォンを確認することはありませんでしたが、男はひどく上機嫌でした。

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