(四)

 その日、私はメアリーの鞄に入ったまま、ロッカーの中にしばらく放置された。そして六度目のベルの合図の後、取り出された。

 メアリーは友達と話をしながら、学校のカフェに来ておしゃべりをしていた。

 メアリーは私を鞄から取り出し、「どう、これ」と言って三人の友人に見せた。

 彼女の友達たちは私を見ると、「あり得ない」「信じらんない」「クソね」と言った。

 メアリーは「でしょう! マジで最悪よね!」と言って四人で笑い合っていた。昨日と言っていることが違うのではと、私は少し混乱した。しかし、今のメアリーの言葉が本音で、昨日父親のサムに言った言葉はタテマエであるということに気づくのはこの少し後だった。


(続く)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る