第9話 落陽の街

9-1

(前回までのあらすじ)

突如としてシャインシティの大規模破壊が開始された。スパイナーの活躍で主犯格のツェッペリンダークは撃墜されるが、その隙に破壊闘士バンリャによって空戸研究所が襲撃されていた!行方不明になった博士とユキエ。そしてスパイナー自身も、敵の起こした地割れによって地の底に沈んでしまうが……?


ダークフォース本拠地の大広間では、バンリャが高笑いをあげながら勝利宣言をしていた。

「ブルァブルァ!スパイナーはこの俺様が葬った。約束通り、将軍の座は俺様のものだあー!」

意気揚々と空の玉座へ向かうバンリャを、参謀カンディルが背後から呼び止める。

「待ってください。まだ勝負は決まってませんよ」

「何だとぉ?スパイナーの奴はもう死んだだろうが。文句があるなら言ってみるがいーい」


カンディルに大股で歩み寄るバンリャの行く手を、今度は守護騎士プロスが遮った。

「こいつやスパイナーの肩を持つわけではないが、奴が本当に死んだのか不明確なのは確かだ。死亡や消滅を確認しなかった貴様にも責任はある」

「そうそう、それですよぉ言いたかったことは。気が合いますね守護騎士殿?」

「黙っていろ」

「そんな事、今更どうやって確認するーう」

「地の底で、研究所内部を探索する他ない。仮に爆死していたとしても、周囲に痕跡が残っている筈だ。何も確認できなければ、シティ全体に探索範囲を広げるまでだ」

「フン、どうせ死んでるに違いないのに、無駄な事を。そんな雑用、「掃除屋」にでもやらせておけーい」


「だ、そうですよ掃除屋殿?」

カンディルが呼びかけた次の瞬間、大広間の入り口に突如として黒い霧が流れ込み、霧は渦を巻いて人型を形作る。中から出てきたのは、闇に溶けるような漆黒の素体に、同じく漆黒の、素材が霧でできているかのように常にシルエットが揺らいでいるトレンチコート状の装甲を装着した機械怪人。人間で言えばマフィアのような外見を持つこの男こそ、「掃除屋」の異名を持つダークフォースの実力者、スモッグダークであった。

「呼んだでありますか?」

「どうせ聞いてただろーう。研究所まで行ってスパイナーの死体を確認してこーい」


「では、もしもスパイナーが生きていた場合、我輩が止めを刺しても構わないという事でありますな?」

スモッグダークは淡々と、しかし野心を隠そうとせずに確認する。幸か不幸か、ダークフォースの有力な機械怪人はスパイナーに次々と排除されており、幹部以外で将軍になる可能性がある者は彼くらいしか残っていなかった。


「勝手にするがいーい」

「承知したであります」

スモッグダークが身を翻すとコートが裾から粒子状に分解していき、まもなく本体ごと黒い霧となって広間から流れるように消え去っていく。そして、1人の幹部がその後に続き、広間を出ていった。

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