猛る重力のピストル。おでちは宮大工
徐々に音を立てて瓦解するカルマ。ぐぐぐ。ぐぐぐ。
かつて「創造性の竜巻」の名を持っていた盆地の末路だ。面妖に......居丈高に......豪放磊落に、タルトタタンにflash!!
そこに、かつて広大な平野があった。見渡す限りの芝漬け
自然は自然あるゆえに重力を増すのだ。そして大地は自壊を始め、閾値を
一つ、村の崩落。土壌の軋みに、建屋の梁は唸りを上げて、重なるつなぎ目は豪儀に砕けて、木材の単なる積載へと変貌する。
もう駄目だ。光だ。松明がゆらゆらの袋小路。アリーナ状に私を囲う、火の甲羅。それを支える蝋燭の失禁。じょーんぼ。
ぐぐぐ。ぐぐぐぐ。月に、イタチの影。梢に、高波。眼下に見ていた狭隘な河川は、もはや私の頭上に俄然屹立する轟々の瀑布だ。自然の摂理がもたらしたこの世の潤みごと、重力の底へと蓋をしてしまうのだ。そうだ、渋柿のただれる、謙虚な演歌だ! おおおおおおおおーーーーぉおぉおー!
そして、沈没の高天原。
◇
旅をするなら本を持て。口数の少ない祖父が僕に残した金言だ。喜寿の翌年に見舞いの間も無くぽっくりと逝った祖父だが、彼の一家言ある言葉たちは今も僕の心に残っている。言霊のせめぎ合いだ。
「蝉の命と思って毎日生きればいい。そうすりゃ、毎日7日の猶予をもらえるのさ」
「独身の間は車を買うな。てめえのふぐりが筋肉痛でカチカチになるまで、自転車漕いで旅をするんだ」
「靴なんかにこだわっても、見てくれるのは下を向いた野郎ばかりだよ」
僕は遠野物語の文庫本を持って、それとは全くゆかりのない鄙びた片田舎へと足を踏み入れた。必要なのは旅のための本ではなく、またいつかこの旅を思い出すために拵える鮮烈な言葉なのだ。ビーカーで頭蓋骨を砕き、フラスコで一物のピストルを洗うみてえに、理性が景色を、
昼食は名産でも無い焼き餃子を食らった。美味と書いて、肉銃の鋭き弾丸。きりもみ状の脂肪のテロリズム。
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にーらにーらにーら笑。譲るための戦いではないのでおじゃる。にーらにーらにーら笑。
白髪の髭ダンディが、空を駆けた。ここにはサンタがまだいるか。
かつては自然と人間の共存する
この地では葉も、枝も、空中で踊ることなく皆うな垂れているのだ!
土砂崩れが起きたその瞬間、この村の花粉症患者が一斉にくしゃみをした。
ぶしゅっ!
ぶしゅっ!
ぶしゅっ!
ぶしゅっ!
杉の断末魔と慟哭の...................。風船は萎んだのだ。クールダウンしよう。
「おーい、そこの若人。貧弱なnipples携えて、どこ行くんだケロ?」
あぜの望遠。稲穂実る泥土の中から、
ほい貴様? さては、パンツをズボンと言い換えたな。ちがふのさ! きゃぱきゃぱきゃぱ。パンツはすなわち、おパンツ--テキーラ一発、脳天の、こよりみてえに千切れたブリーフが、肩から吊るされてるのさ。そうさ、サスペンダー付ブリーフなんだろ?
俺のnippleは、伸縮自在で、鋼色にカチカチ娼婦さ。竹筒に乳首。月並みな話だでよ。
「おい、
「日も早え。いいさ、てめえは【綺羅星の宮】に行くがええ。今はなき神の言葉を聞けるかもしれんな」
「ぴー!!ぴー!!ぴー!! ありがたいね、竹船はここらにある貝?」
「ないさ。そんなものは.........nein」
かぶりを振り、下顎のこよなく震える豆狸。ピーター笑ピータピー笑。
◇
俺は全身クロールマン。クロール一本で、【綺羅星の宮】へとたどり着くのさ。宮迫。
飛沫がflash!! 高波が来ている。海が盆地の形をしている。没落は近いのかもしれない。僕にはそれを見届ける義務がR。
ようやくたどり着いたright egg。電線の縦横無尽に走る惑星コンビナート。
人力車が駆けた。しかし、漕ぐのは蛙面の車夫だ。見渡す限り、蛙面だ。にー(恐)。
無人島の中央には、蛙面の者が建立したけょだいな尖塔があった。ここには、蛙面の神が宿ると聞いている。
玉垣に囲繞された貴い本殿。その中には、一人の......いや......いや、ぴいや......一匹の宮大工がいた。水かきのついたその手には、金槌が握られている。
「おい、そこの蛙。人間が来た。貴様らの神は救われるのさ」
宮大工は梯子に登り、拝殿の支柱と思わしきものをコツコツと叩きながら、僕に背を向けたままに「傲慢なことを言うな、狸」と返答した。
「神を救うなんて、おこがましい。神がおでちを救うのさ」
「そうさ。神はお前を救う。お前を救う神を、僕が今救ってやったのさ」
ようやく振り返った蛙面は、どこに目があるのか分からないくらい皺々だった。寄る年並と渋面のワンセットか。
「救ってやった? てめえ、見ねえ顔だが随分と自分を過大評価してるみてえだな? てめえに救われるものなんて、どこにもねえ」
「ひひひ。てめえは何も分かってねえ。この世界を何も分かってないのさ」
含み笑いが止まらない。蛙面の者がどれだけ信仰しようが、自然の摂理がそれを赦さないのさ。
「この世界には、累進の重力がある。人間の立ち入らない土地は、その分だけ重力を増すのさ。そしていずれは......DOWN!! 地獄の焦土へと沈んでいくんだ。悲しい話だが、人間がデザインしなきゃ、お前たちの神は救われないのさ」
非常に悲しい事実だ。自然の摂理があるゆえに、それ以外の自然に対し、僕たちは至極人工的であらねばならない。きーんきーん泣。
「僕に、この地を救わせてくれ」
「そんなことなら話は遅え。今ここでお前が立ち入ったことで、おでちたちの救済は振り出しにもどっちまった。ティラノ」
宮大工が金槌を手放した。金槌は自ずから上昇を続け、やがて上空で点になった。
「あの金槌は、さっきまでの猛る重力のピストルと等価になるよう、反重力が働いてた。それがあの様だ。てめえは、おでちから重力を奪ったのだ」
嫌な言い方。厭な言い方。がるるるるる!
「重力を奪っただと? ならば貴様は、地獄に行きたかったとでも言うのか!?」
「ああ、おでちは明らかに、地獄を目指してた。なぜなら地獄は神の産物だからさ。そう、それは自然の賜物なんだ。地獄がどれほど辛かろうが、それが紛れもない自然なら、おでちは自然の中で耐え忍ぶことを選ぶ。おでちにとってのホントの地獄は、遠い海から遥々クロールでやってくる、二足歩行の原罪人だけなんだよ特大乳首」
カチカチに、昂然と、侃侃諤諤に太陽ソーラーnipple!!
その時、僕の心に一つの変化が生じた。そしてその瞬間、それは訪れた。
地鳴り。鳴り響く梁の砕ける音。上空から急速に降ってくる--
金槌。
僕は、何よりも猿であることを望んだ。
そして、地獄で大量の木の実を取り、その身を焦がしてミイラになることを望んだのだ。
がじゃん。
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