第67話 遺跡
『遺跡の5層にこの島の封印を制御している魔石があります。おそらくそこで何かが起きていると思うので、まずは5層を目指してください。』
白狼の依頼を解決し、アウレアンへ転移してもらうため神殿の地下にある遺跡の調査を行うことになった。
現在においては前人未到の遺跡の調査なんて胸が高鳴る要素しかない。
様々な仕掛けや古代の宝物なんかもあったりするのだろうか…
『基本的にはトルスを通して私が案内しますが、こちらの遺跡の地図を渡しておきます。
5層までであれば、これだけあれば大丈夫でしょう。』
そう言うとどこから取り出したのか、不思議な金属板を渡された。
よく見ると地図が刻まれている。
『龍騎士であれば空間術は使えますよね?階層ごとに別の板になるため少し嵩張りますのでしまっておいてください。』
第1層の地図以外は龍珠の中にしまっておいた。
紙の地図だと数百年の保管は難しいだろうし、頑丈な素材の方が良いのだろう。
しかし見たことのない金属だったな。
調査の準備が整い、白狼のいた場所のさらに奥へと行くと遺跡の中へと入るための階段があった。
『私はここから先には行けません。ですので、ここからはトルスに話していただければ聞き取れます。』
精霊を介して会話ができるなんてすごいな。
召喚術が上達すれば僕もできるのだろうか。
『あ、そうだ。遺跡の中は灯りはありますでしょうか?光る苔とかがあると視界が確保しやすいのですが。』
『それなら私が光の魔術を使えるよ。そんなに魔力も使わないから長時間でも大丈夫。』
クリオの魔術で問題なさそうだと思っていたら、足元でトルスがばちばちと放電して明るくなっていた。
『灯りになってくれようとしたのですか?ありがとうございます。必要になったらお願いします。』
トルスは了解という意味だろうか、軽く返事をする様に鳴いた。
『む、遺跡の中に誰かが入った形跡がありますね。』
白狼の一言で何かが起きている様子だった。
『普段は小動物などが間違って入れないように封印してあるのですが…
それに封印は問題ないですし、足跡はないので精霊か何かかもしれないですね。』
精霊という単語に反応する。
もしかしたらうちの子達かもしれない。
『何やら心当たりがありそうですね?もしかしたら中で迷っている可能性もありますし、見つけたら逃げないようにしてくださいね。』
遺跡に潜るため、クリオが灯りを照らした。
『光よ、我が行き先を照らせ!』
地下へと歩みを進めて潜っていく。
遺跡の調査というと棲みついている魔獣の討伐を行うというのが物語の定番だが、この遺跡は生命の存在が希薄であり、生き物の気配がほとんど感じられなかった。
『クリオの魔術のおかげで足元や地図を見たりするのは問題なさそうだね。』
少し進んで行くと、外から光が差し込んでいる場所が見えた。
『遺跡にも光が差し込むつくりなんですね。』
『いえ、おかしいですね。ここは以前は崩れていなかった気がするのですが…』」
トルスから白狼の声が聞こえてきた。
『やはり遺跡も崩れるのです。以前とは何年くらい前の話でしょうか?』
『うーん、百年くらいでしょうか。割と最近のことですよ。』
人族との時間の感覚の違いに驚かされる。
しかし神殿ではなく、この崩れた箇所からフルー達が入り込んだに違いない。
そう考えながら進んで行くと、先程よりも開けた明るい場所に辿り着いた。
中央で泉から水が湧き出ている様に見える。
『ここは元から光が差し込む作りですよ。でも外からは入れない様になっています。』
『エレメントの濃度がすごい…あそこの泉はエレメントの源泉でしょうか?』
クリオの驚きも最もだが、龍気も非常に濃い。
ここは龍脈の力が溢れ出る源泉なのだろうか?
『そうですね、ここはエレメントの源泉で間違いありません。
そもそもエレメントの源泉とは龍脈の力が地上に溢れ出る場所なので、貴方達の言う龍気が溢れる場所でもあります。』
白狼から源泉の説明を受けていると、広場の奥の方に動く影があった。
『何かいる、気をつけて!』
対処ができる様に構えると、よく見たら花畑でアーラと精霊達が遊んでいるだけだった。
『なんだ、アーラ達か。いなくなったと思ったらこんなところで遊んでいたのか。どうしてここに来たの?』
アーラ達は僕達に気づいていたらしく、手を降り花冠を持ってきて僕とクリオとトルスの頭に乗せてくれた。
『アーラトアソンデタ』
『ココキモチイイ』
『エレメントイッパイデス』
『ピー!』
エレメントが豊富なことに気づき、アーラと遊んでたらしい。
確かに龍脈の力が溢れ出ているならアーラにとっても良い場所だろうし精霊達が集まるのもおかしなことではなかった。
そういえば急に白狼が静かになった気がする。
『そうだ、まだ紹介していなかったですね。
藍碧龍様の御子である、アーラ。
僕と契約している精霊のフルー、ナトゥ、ヘルバです。』
名前が呼ばれるごとに1柱ずつ手を挙げて可愛らしく挨拶をしていた。
しかし、白狼は固まっている。
『あの、何かありましたでしょうか?』
するとトルスが急に跪く様に座り込んだ。
『遠隔にて失礼いたします。
私はこの島の守護獣アルバ。普段は白狼と呼ばれております。龍王様からこの島一帯の龍脈とこの遺跡の管理を任されております。
そしてこの子は私の相棒である、雷の精霊トルスです。
トルス共々、龍の御子であるアーラ様にお会いでき大変嬉しく思っております。』
『ピー!』
急に畏まった白狼とそれに対して「よろしく!」とばかりに返事をするアーラ。
龍王様から管理を任されているということで、龍族には逆らえない何かがあるのだろうか。
『ですが龍族のお方がいるとなると話が変わりました。
この島に長く龍族の方が滞在すると龍脈に影響が出てしまい、この地域一帯が不安定になる恐れがあります。
そのために我々が管理を任されているという背景もありますが、早めに問題を解決しないといけませんね。』
精霊達が長居してはいけないと警告していたが、その理由がわかった。
龍族がいると龍脈に影響が出るとはどういうことだろうか。
後で詳しく聞く時間が取れると良いけれど…
『それでは急ぎましょうか。アーラ達もついてきてくれるよね?』
『ピー!』
元気な返事と共に仲間も増えて、遺跡の深部へと向かった。
道中珍しい苔が生えていたりして、ヘルバが採取することを進めてくれたりしたものの、魔獣もいなく地図通りに進むだけの安全な道程であった。
『この遺跡は何のためにあるのでしょうか?封印のためだけにしては大規模な建物ですが。』
『昔はここにも人が住んでいたのですよ。私ですら昔と思う時間が経ちましたが。
あとは今は案内通りに進んでいるので大丈夫ですが、侵入者に対する罠は結構張り巡らされているのですよ?』
クリオと顔を見合わせ、地図と案内がなかった時のことを考えてゾッとした。
もし今後も遺跡などの探索をすることがあるのであれば、斥候の様な罠などを見極める能力を持つ仲間が必要だなと思った。
3,4層まで行くと昔の生活の名残りらしきものや、朽ちた家具や武器など確かに過去にそこに誰かが住んでいた痕跡が残っていた。
『貴重なものは残っていないと思いますよ。皆出て行く時に持っていってしまいましたから。』
過去にここにいた人達は全滅したのではなく、どこかへ行ってしまったらしい。
少し気になるものがあったため、もらって良いかを聞くと白狼はなんでも持って行って良いと答えた。
『さて、ここの階段を降りると5層です。5層には封印を護るための守護像が設置されています。
魔石の調査のために守護像を一度止める必要がありますが、止めるまでの間は攻撃を受け止めていただけますか?
その間にトルスがなんとかしますので。』
『その守護像は何体いて、どのような攻撃をしてきますか?』
『まず狼型が5体いて、爪と牙と体当たりで素早く攻撃してきます。
次に人型が3体いて、剣で攻撃して盾で守ります。
最後に巨人型が1体いて、動きは遅いですが、棍棒で叩きつけてきます。』
こちらは僕とクリオ、あとは3柱の精霊達か。アーラはまだ戦えないだろうし…
『ヘルバは足元に蔦を絡ませて、動きを妨害してくれるかな?多分巨人型以外はなんとかなるはず。
ナトゥは土の壁を作ってクリオを守って、後は敵が連携できない様に分断できるとなおよし。
フルーは僕と一緒に守護像の武器を壊すのを手伝って。
クリオは1体ずつで良いから風で敵を吹き飛ばして。
その間にトルスは守護像の動きを止めてもらえると。』
とりあえず作戦は決まったので階段を降りていく。
すると広い空間に辿り着き、奥には巨大な魔石が浮かんでいた。
そして手前には守護像が侵入者を待ち構える様に並んでいた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます