第68話 守護
5層に足を踏み入れた瞬間、狼型守護像と人型守護像が動き出した。
侵入者が入るだけで検知する仕掛けがあるのだろう。
だが、巨人型守護像は動く気配がなかった。
『巨人型が動いていない、今のうちに他の守護像を止めよう。
クリオ、突風で動きを止められるかな?』
『わかったわ。吹き荒れる風よ、彼の者達を押し戻せ!』
クリオが生み出した突風により、守護像達の動きが鈍くなる。
『よし、今だ!ヘルバ、足止めをお願い!』
『ワカリマシター』
守護像達の足元から急激に蔦が生えていき、足や胴体に絡みついていき、その動きをさらに鈍らせていた。
ヘルバが蔦を生やしている間にナトゥは複数の土壁を生み出して守護像達を分断していった。
そして最後にクリオの前に、土で出来た防壁を作り出した。
『よし、これならある程度はもつはずだ。今のうちに叩こう!』
狼型守護像は少しずつ牙で蔦を噛みちぎり動き始めていた。
蔦の拘束から抜け出した守護像が跳び上がり噛み付いてくるが、小盾で受け止めた後、その牙を叩き割った。
衝撃で転がり隙を見せた守護像にトルスが帯電しながら、背中に向かって体当たりをした。
すると電気によるものか衝撃によるものかはわからないが、狼型守護像の動きは止まった。
『よし、まずは1体!』
『守護像は少しくらいならしばらく経てば自動で修復するので、あまり遠慮しないで大丈夫ですよ。』
白狼からの指摘により、全力を出しても問題はないと判断した。
そうしている間にも近寄ってきた狼型守護像はクリオの突風で弾き飛ばされていた。
狼型守護像を順調に停止させていると、人型守護像も蔦を抜けて土壁を叩き壊して出てきた。
クリオを護る防壁に剣を振り下ろし壊そうとするも、他の土壁よりも厚く硬いため瞬時に壊れることはなかった。
再度クリオが突風を生み出すも人型守護像を吹き飛ばす程ではなかった。
だが動きが鈍くなった瞬間に武器を叩き落とし、薙ぎ払いにより転倒させることができた。
そこにトリスが向かい、動きを止めて行った。
残すは人型1体と狼型2体となったところで、巨人型守護像が動き始めた。
『いけない、急いで手前にいるこいつらをなんとかしないと。』
龍気が溢れていて、ナトゥもいる今ならいつもよりも威力が出るかもしれない。
『地穿槍!』
薙ぎ払いと共に地面から生まれた土の槍は守護像達を易々と貫いてしまった。
『すごい…』
クリオはアルクスの闘技の凄まじい威力に衝撃を受けていた。
『闘技も使いこなしている様ですね。ですが、ここまで壊してしまうと直すのに少し時間がかかりそうですね…』
『申し訳ありません。ですが、巨人型が…
みんな、下がって!』
その瞬間、巨人型守護像が跳躍して棍棒を叩きつけてきた。
動きは遅く、避ける余裕があるものの、あの棍棒に当たってしまったらバルトロ兄さんくらいしか耐えられないだろう。
巨人型守護像に向かっていくと、標的として認識されたのか執拗に棍棒を振り回してきた。
回避することに集中しながら、棍棒を破壊できないかと考える。
『巨人型は他の守護像と異なり、動作を止めるためには内部にある核に対して雷を叩きつける必要があります。外側からだと届かないため、一度核を露出させる必要があります。』
『核はどこに?』
『人間の心臓と同じ位置ですが、背中側からの方が良いでしょう。』
動きを止めるためにヘルバに再度他の守護像と同様に蔦を絡ませてもらうも、力が強いためか全く効果がなく一瞬で抜け出されてしまった。
同時にナトゥに土壁を作り出したが、棍棒の一撃で一瞬で叩き壊される。
『今なら!水迅穿!』
巨人型が棍棒を振り下ろしたタイミングで手元に向けて水迅穿を放ち、武器破壊を狙う。
柄の一部が削れ、巨人型が再度棍棒を振り上げた勢いにより根本から棍棒が折れた。
そして高く舞い上がった棍棒が落ちてきた。
『危ない!』
急なことで固まっていたクリオを目掛けて棍棒が落ちてきたが、既の所でアルクスに抱えられて避けることができた。
『大丈夫?』
『えぇ、私は大丈夫…でもアルクス、血が…』
『これくらい大丈夫だよ、龍装鎧が治してくれる!』
飛んで来た破片によるものか出血していたが、龍装鎧の力によって徐々に治っていた。
その間に巨人型は棍棒での攻撃を諦めて、拳でトルスを殴りつけていたが動きはそこまで速くないため、軽やかに回避されていた。
どう対応しようか考えていたところで、一つ試してみたいことができた。
『ヘルバ、ナトゥこういうことってできるかな?』
『ナニナニ』『デキソウデス』
拘束できないのであればとナトゥが複数の土柱を作り出し、ヘルバが複数の蔓を撚り合わせて編み込んだ太い蔓で土柱同士を繋いだ。
『こっちだ!水衝刃!』
巨人型の標的をトルスからこちらへと移す。
足元に気付かずにこちらへと歩き出したが、蔓に足をとられて転倒した。
『ヘルバ、今だ!』
巨人型は起き上がろうとするもヘルバが生み出した撚り合わせた蔓によって首や手首、足首を封じられてすぐには動けない様子だった。
『アルクス、今よ!』
巨人型の背に飛び乗り、今扱える龍気を武器の先端一点に集中した。
そして、心臓の裏側に対して全力の一撃を叩きつけた。
だが、全力を込めた割りにあまり傷をつけることができなかった。
『なんて硬いんだ…』
『大丈夫です、核が見えました!これなら!』
トルスも巨人型の背に乗り核に向けて放電した。
するとヘルバの蔓から逃れようともがいていた巨人型は徐々に動かなくなり、完全に動作を停止した。
『ふぅ、ありがとうございました。これでしばらく守護像は停止します。
今のうちに封印を調べましょう。
そうそう、守護像は少し壊れてしまいましたが、しばらく経てば直ります。アルクスが装備している龍装鎧と似たようなものだと思ってもらえるとわかりやすいでしょう。』
部屋の奥へと向かい、封印に使られている魔石を調べることにした。
遠くから見ると魔石のように見えたが、魔導珠よりも遥かに大きい球体であった。
僕とクリオはその威容を前に驚くことしかできなかった。
『見たところ魔石は問題なさそうですね。この魔石は動力源ではなく、周囲から吸い上げたエレメントでこの海域一体に封印を張る魔道具なのです。』
1層にエレメントの源泉があったようにここは龍気だけでなく、エレメントも溢れている。
精霊達の様子からしてもよくわかる。
何が原因なんだろうかと考えているとクリオが何か言いたそうにしていた。
『どうしたの?』
『ここの魔力の流れ、止まってないかな?』
『どれどれ。』
エレメントを吸い上げるための仕組みらしき管に亀裂が入り、そこから魔力が漏れ出していた。
『どうやらここが問題みたいですね。経年劣化にしては何故ここだけ壊れているのかはわかりませんが…
近くの部屋に修理用の道具があったはずです。探しに行きましょう。』
白狼の指示のもと、さらに奥の部屋へ修理道具を探しに向かった。
『この装置の奥はしばらくは罠などはありませんから安心してください。
侵入者は基本的に守護像に倒されるため、この奥に現れることはなかったのです。』
確かに白狼とトルスがいなかったら、あの頑丈な守護像達が動かなくなるまで戦い続けるのはなかなか難しかっただろう。時間経過で直るとも言っていたし。
修理道具を見つけて白狼の指示のもと皆で協力して修理を行った。
『おぉ、どうやら封印がちゃんと動き始めましたね。』
『そんなにすぐにわかるのですか?』
『これでも私は龍王様に任せられた管理者です。意識すればこの辺りの龍脈の流れなどは簡単にわかりますよ。』
自分でも目に龍気を集中すれば龍脈が流れているかどうかは見ることができるが、より上位の能力ということだろうか。自分にわかるのはせいぜい周囲数百メートルくらいだな。
そして封印の対応が完了した一行は神殿へと戻った。
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