時巻時空
しーがす
第1話 事故
ー9年前ー
僕には、七瀬優生(ななせゆうせい)と言う仲のいい友達がいた。
優生くんとは、5歳の時からずっと一緒に居た、幼馴染と言うやつだ。
僕の本名が草香晴紀(くさかはれき)なので、よく「くさはれ」と呼ばれていた。
家は近くないし、親同士仲がいい訳ではないけれど、幼稚園の時は二人でよく、くっついて歩いていた。
日曜日のある日、親とショッピングモールで買い物をしていたら、たまたま優生くんに会った。
お母さん達は、「公園で遊んでくる?」と、近くにあった少し小さめの公園を指差した。
僕と優生くんは勿論頷いた。
鬼ごっこをしたり、滑り台を滑ったり、楽しかった。
僕がふざけて柵の上で立って遊んでいると、優生くんは危ないよと必死で止めてくれていた。
しっかり聞いていれば良かった。と思っても遅い。
あまりにじたばたするから、足を滑らせて、目の前に立っていた優生くんを押し潰してしまったのだ。
優生くんの頭から大量の血が出ていて、動きやしない。必死に名前を呼んでも、返事もしない。
恐くて、恐くて、とにかく恐くて、僕は泣いた。沢山泣いた。
泣き声に気づいた近所の人達が、救急車を呼んでくれて、その少し後に僕の親と、優生くんの親が来た。
僕は「ごめんなさい」の繰り返しで、お母さんを抱きしめていた。お母さんは「大丈夫だから。」と言ってポンポンと優しく撫でてくれた。
気づいたら眠っていて、もうそこは既に家だった。
「ゆうせいくん……っ優生くんは!」
「晴紀……おはよう。」
どこか苦しそうに笑うお母さんを見て、胸が引き裂かれるような痛みを感じた。
「ママ、優生くんは……?」
「……ちょっと、頭をごっつんこしちゃってね、しばらく寝いないといけないのよ。でも大丈夫。またすぐに遊べる……から」
少し震えた声で、お母さんが言う。
なんとなくだけど、その時は何故か、罪悪感の鎖に締め付けられた気がした。
そして僕は、14歳になった──────。
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