すこしブキミ? 短編の缶詰

白林透

王様と占い師

 あるところに、おおきなくにがありました。

 そのくにでは、なにおおきなごとをする場合ばあいかならうらないをするという習慣しゅうかんがありました。


 しかし、あるとき王様おうさまうらないがきらいでした。

 王様おうさまうらないの結果けっか無視むしして、色々いろいろことめました。

 そのせいで、失敗しっぱい沢山たくさんしました。


 あるほかくにから美術品びじゅつひんまれることになりました。

 ちからのあるうらなは、王様おうさまいました。


なにくないことこるから、めたほうがいいです」


 しかし王様おうさまは「うらなことなど信用しんようできない」とって、みみちませんでした。

 やがて、それらは美術館びじゅつかん公開こうかいされました。

 沢山たくさんひとが、それをためにやってきました。

 しかしうらなっていたとおり、美術品びじゅつひんのいくつかがぬすまれてしまったのです。

 王様おうさま部下ぶか兵士へいしたちに怒鳴どなります。


「はやく、美術品びじゅつひんぬすんだ犯罪人はんざいにんつかまえて、わたしのもとにれてい!」


 兵士へいし一人ひとりがいいました。


うらなに、うらなってもらってはいかがでしょう?」


 しかし、王様おうさまはいいかおをしません。


「あんなものは信用しんようできない」


 兵士へいしたちは、しかたなく自力じりき犯人はんにんさがことにしました。

 でも、そのうちの何人なんにんかが、ひみつでうらなもとたずねました。

 うらないや顔一かおひとつせず、うらないました。


犯人はんにんは、すぐにみつかるだろう」


 その言葉通ことばどおり、ほどなくしてから犯人はんにんとおぼしき、いぬれた青年せいねんつかまりました。

 しかし、青年せいねんは「自分じぶん無実むじつだ」ときわめきます。

 こまった兵士へいしは、王様おうさまいました。


「これはもう、うらなかれ犯人はんにんうらなってもらうしかありません」


 王様おうさまはやっぱりいやがりましたが、しかしこればっかりはどうにもなりません。

 そうして渋々しぶしぶうらなおう宮殿きゅうでんばれることになりました。


「はやく、うらなってしまえ」


 王様おうさま不機嫌ふきげんいます。

 うらないや顔一かおひとつせず、タロットカードをしました。

 それで、青年せいねん犯人はんにんうらなうのです。

 青年せいねんきながら、うらな無実むじつだとうったえました。

 うらな無言むごんで、タロットカードをならべていきます。


「……結果けっかました」


 そうして、うらなならべられたカードのひとつをゆびさします。

 そこには、いぬれたおとこかれていました。

 王様おうさまいました。


いぬれているだ。やっぱり、このおとこ犯人はんにんだったんだな!」


 しかし、うらなくびります。


「これは愚者ぐしゃのカードです。おろもの道化どうけという意味いみです」


 王様おうさまくびひねります。


「なるほど、わからん」


 うらなつづけます。


「このおとこは、犯人はんにん間違まちがわれたあわれなおとこなのです。つまり、ただの馬鹿ばかです」


 そのこたえをいて、青年せいねんきました。

 うれしいからいたのかはだれにもわかりません。

 わりに、おこったのは王様おうさまでした。


「なら、犯人はんにんだれだというんだ」


 うらなつづけます。


大丈夫だいじょうぶです。このカードをれば、本当ほんとう犯人はんにんかります」


 うらなは、べつ裏向うらむきのカードをゆびさし、そのままひっくりかえしました。

 そこには、かんむりをかぶったおとこかれていました。

 王様おうさまかおにしていました。


「やっぱり、うらなてにならない!」



 ~おしまい~

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