超有名会社の次期社長は普通の男子高校生になりたい

またたび

第1話 新生活スタート

"榎本楓えのもとそう"


この名前は大人であれば誰もが知っているだろう。1000を超える子会社を持つ有名会社の次期社長の名前だ。

そして、その名前は僕だ。



僕は榎本と言う名前に恥じないように何でも完璧に出来るように教育されてきた。

勉強や運動はもちろん、政治や経済学など会社を継ぐ者として必要な知識を身につけた。


だが、今いる場所は高層ビルも1つもない田園風景の広がるのどかな世界だ。

もう薄々分かってきたのではないだろうか。僕は次期社長の義務を捨てたことを。


この物語は僕の新しい物語だ───!




僕の年齢は16歳で高校2年生。

通常この歳で家を買うことは出来ないのだが、大人を買収することなど僕にとって容易い。

僕が自ら手がけたプロジェクトなどによって得たお金を使えば身分詐称や未成年での家購入なんて造作もない。


こんな事をしているが僕は普通になるためにここに来た。もう、こんなことはしないさ。


高校は一般公立高校で家の近くの桜ヶ丘第一高等学校に行くことになっている。

偏差値はさほど高くなく50くらいだ。


これぞThe普通ではないか?

僕はここでの生活に大きな期待を膨らませるのだった。が、早くも問題発生する。


それは……ご飯が作れないこと。

まずいな…。勉強では料理のことは習ってなかったし、包丁さえまともに使えない。

しばらくはカップラーメン生活だな。カップラーメンとは代表的な簡易食だと思う。お湯を沸かし容器に注ぐだけで完成するなんて活気的すぎる。


そう言えば今日から学校に通い始めるのだ。学校には学食があるらしいのでそこで食べれるので食事に関しては問題はないようだ。


制服は学ランのようだ。新調した制服に身を包むことはやはり気分が上がる。一通りおかしな所はないか全身鏡で確認する。


「…よし」


僕は絶対に普通の高校生になるんだ!!

そう決意し学校へ向かう1歩を踏み出したのだった。



「失礼します」


凛とした自分の声が静寂な廊下と部屋を繋ぐ。ここは僕の通う高校の校長室だ。まぁ、編入扱いだから呼ばれることは当然なのだ。


「おぉ、よく来てくれた。榎本颯くん」


この人は呉直一二三くれじかひふみ。僕のことを知っている人だ。


「お久しぶりです。呉直さん」


ちょうど僕がこの学校の編入試験を受けた時に知ったことなのだが。

僕がソファーに座れば話しを振られた。


「どうですか、ここの場所は?何もないところですけど」


少し微笑んだため呉直さんの目が垂れ目になる。そんな優しい雰囲気の人を前にして少し落ち着いた。


「いえ、とても良いところです。何もないのがいいんです」


高層ビルが何個も連なる都会よりは全くと言っていいほど居心地が良い。

空気も見晴らしもいい所だらけなのだ。


「私も貴方のここでの暮らしが有意義なものになると信じています。ようこそ、桜ヶ丘第一高等学校へ」

「はい、僕もそう願っています」


僕のこれからの生活に胸をおどらせたのだった。

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