第46話 遺されたもの_1
神話に謡われる
劫火に焼かれて何も残さずに滅びたとされる逸話だが、別の話もある。
濁塑滔を倒した魔法使いは、他に類を見ない絶大な力を手に入れたのだと。
何も残さなかったわけではない。そういう伝承があった。
無色のエネルギーと呼ばれるのは、魔物が死ぬ際に放出する力で、倒した人間がそれを得ることが出来る。
由来を同一とし、女神の恩寵が薄れたとされる清廊族も、そのエネルギーを得ることは出来る。効率は悪いが。
理由は明確ではないが、人間同士での殺し合いでは無色のエネルギーは得られない。
これは人間と清廊族との関係でも同じく。
一方の魔物の方でも、食らった獲物の持つエネルギーの一部を得ることが出来る。
一部を。
濁塑滔の特異性は、万変であるという点だった。
一部の女神由来の物以外であればあらゆるものを吸収し、自分の糧とすることを可能としている。
その上限がない。似たような魔物のブラックウーズと違い、上限がない。
また、得たエネルギーを全て万変させることが出来た。
無色のエネルギーの塊。
長く生きて多くを食らい続けた濁塑滔であれば、そこに溜められたエネルギーの量は計り知れない。
このエネルギーは物質化もするが、その多くは魂に寄り添うと言われている。
体を構成していたゲル状物質の大半を失っていたとしても、濁塑滔が持つ無色のエネルギーにはほとんど影響がない。
そして濁塑滔は魔物だ。
魔物を倒したものは、そのエネルギーを得ることが出来る。
人間でも、清廊族でも。
誰でも同じだったのかもしれない。
確認のしようもない話ではある。
ただ、もしその濁塑滔と深く心を通わせた者がいたならば。
おそらくその力は、余すことなくその者に受け継がれるのではないだろうか。
千年以上の年月を生き抜き、数多の命を食らい続けてきた伝説の魔物。その力を。
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