第452話 決して交わらない関係

 今回はちょっと考えたことを。

 声優アイドルグループの22/7の河瀬詩さんにストーカー行為をした人が逮捕されまして、なんというか、腹立たしいと言うか、疑問しかない。

 僕の個人的な感覚ですが、例えばアイドルと友達になりたいとか、付き合いたいとか、そういうことを全く考えたことがないか、と言われると、考えたことはある。でも、選びうる可能性に、出待ちからの尾行、のようなものはない。

 ものすごく特殊な発想だと自覚がありますが、僕の中での芸能人との接点は、ラジオにおける、パーソナリティと常連リスナー、で十分だった。あけすけに言えば、リスナーの一人として認識してもらうことで、繋がりが持てた、と思えた。きっと他のアイドルオタクの人も、握手会やチェキ会などに足繁く通って、繋がりを持とうとすると思う。この「繋がり」というものは、一対一で、しかし決して両者がある種のラインを踏み越えない、という前提がある。それでもオタクからすれば、自分という存在がアイドルに認識された時、ラインを越えたような錯覚がある。僕の個人的な感覚もそんな感じで、ラジオでメールを読まれる時の反応で、越境の錯覚があり、変な満足感がある。久しぶりにメールを読まれた時、「○○さん、久しぶり」みたいに認識されるのは、何者にも変え難い。

 よく分からないストーカーの人は、アイドルの住まいを暴いたり、待ち伏せして盗撮したりして、どんな満足があったのだろう。僕には想像できない。そこに満足感があるとしたら、僕とは感覚が違う、というしかない。これは、違法とか、ルールやマナーの無視という以上に、根深い問題だと思う。

 少し前に僕はよく知らないタレントの方が亡くなられたけど、その時はSNSでの誹謗中傷が原因ではという話題が出ていた。SNSも、結局、芸能人とファンの間にあるラインが見えない人間が、不自然な越境をすることで、悲劇の元になる気がする。全てがあまりにも容易すぎると言うか。かれこれ二十年くらい前ですが、インターネットはありましたが、芸能人と接点を持つには、個人のウェブサイトに出入りすることはできても、かなり限定されたし、当時のファンは手紙としてのファンレターなどを送ったと思われる。現代では簡単に、相手に直接、メッセージを送れる。この自由さは、逆に問題かもしれない。芸能人の側から検索することもあるだろう、と考えると、本来的にはみんながお行儀良くしていなくちゃいけないんだろうけど、ネットでかしこまってる人はもうどこにもいない。

 ともかく、河瀬詩さんが少しずつでも楽になって、ファンを信頼できるようになることを願います。



2023/7/20

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