第402話 「これでゲーム・イズ・オーバーだ!」

 今回は野球の思い出。

 僕が幼少期を過ごした地域では少年野球のチームがいくつかあって、近所の同級生はみんな野球をしていた。僕は何故か、やらなかった。何故かというか、そもそも僕は野球のルールを知らなかったし、誰も教えてくれなかった。誰も、というのは、友達、だけではなく、親も教えなかった。そもそも親に野球の知識があったか、怪しい。

 そんな人間が成長して、初めて野球について知ったのはアニメからでした。ひとつは「おおきく振りかぶって」、もう一つは「メジャー」です。

「おおきく振りかぶって」はたまたまテレビで見て、その時はただ見ているだけだったのが、後々になって原作漫画を買い始めたところで、野球のイロハが分かってきた。もっとも、この作品にのめり込んだきっかけは、田島がフォークボールをステップを踏んでから打った、例のシーンからです。それから地区予選の一回戦で強豪校に勝つのも、すごい吸引力だった。

「メジャー」は本当にたまたま、週末の夕方にNHKで放送していたのを見たのですが、変なところから入っていて、茂野吾郎がアメリカに渡った後から見ました。なので、小学校、中学校、高校と何があったのかは後からうっすら追いかけましたが、実は今もよく分かってない。茂野が「ファストボールオンリー」で、しかし正確無比な制球力を身につけたのは、なんというか、夢があった。そこからワールドカップ編になり、メジャーリーグ編と進んで、ここでイップスというものを知ったりした。テレビ放送を追っているうちに原作も完結し、アニメも最後まで放送されて、ホッとした記憶もある。

 さて、少し前ですが、WBCの決勝、アメリカ対日本が劇的な展開になりました。9回表、一点リードの日本がマウンドに大谷翔平選手を送り出し、なんやかんやあった後、ツーアウトになったところで、最後の打者に対して大谷選手が160キロのストレートで追い込んで行った時、「茂野吾郎かよ……」と愕然とした。めちゃくちゃネタバレしますが、「メジャー」の一番最後はライバルの打者に対した時、茂野がキャッチャーの佐藤に「変化球なら打ち取れる」と言われるのに対し、「いや、ストレートで行く」みたいな返事をして、実際、ストレートで打ち取るんですが、現実のWBC決勝、最後の球は、大谷翔平選手が渾身のストレートを投げるのでは? という妄想が瞬間的に、爆発的に頭の中に広がって、なんというか、息が詰まった。実際には完璧な変化球で空振りでしたが、この場面は現実と創作が入り混じって、自分が何を見ているか、よくわからないほどだった。

 いやはや、凄いことが現実になったな、と思いましたね。ある種の祭りでしたが、感動しました。まったく、おみそれしました。



2023/3/23

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