第164話 あなたの手元の大型書店
この冬はとにかく散財する傾向にあるのですが、今回もそんな話。
浅井ラボさんの「されど罪人は竜と踊る」が今、二十巻と少し出ていて、十五冊くらいは紙の本で持っているのですが、なんだかんだでKindle本で部分的に買い直しました。セールで実質半額なので、良いかな、と軽い気持ちで。
しかしこれが泥沼で、なんか、準備が整ったら全巻、Kindle本で揃えたいな、とか、危険なことを思い始めている。正直、自分で自分が怖い。怖すぎる。
それにしても、Kindleを使い始めて三年か四年くらいですが、あまり革新的ではない気もしながら、やはり革新的なのかな、と思ったりする。
今もあるかは知りませんが、何かのCMで「あなたの街の秋葉原」というフレーズがありましたが、Kindleは間違いなく、あなたの手の中の大型書店です。ネット環境と端末とお金があれば、本を読むのにも買うのにも困ることがない。しかも品切れがなく、持ち運びも保管も非常に合理的にできる。
僕がこの革新に大手を振って賛成できないのは、やはり紙の本が良い、となるのですが、ちょっと別の後ろめたさもある。
少し前からNHKで放送している「中国新世紀」というシリーズのレポートで、中国のお酒の国営工場の仕事に機械を導入しようとする場面がありました。この工場では人による手作業が多いようなんです。それが時代遅れとかではなく、僕が考えたのは、果たして機械化されたら、ここで働いている人は無職になるのか? という疑問でした。
Kindle、電子書籍は革新的だけど、間違いなく書店は衰退する。それが僕の中では「読書人による裏切り」ではないか、思ったりする。まぁ、それを言ったら作家からすれば、無料で公開されるネット小説しか読まなくなった読者人も「裏切り者」に見えたりする気もしますが。
何度かエッセイに書いてますが、僕はブックオフのヘビーユーザーなので、新品の本をばかすか買っていない以上、すでに「裏切り者」なのですが、今度はさらに古本屋からも「裏切り者」となるかと思うと、気が重かったりする。もっとも、文庫一冊百円で買う客が何言ってんだ、と指摘されるのは、ありそうですが。
きっと作家も、出版社も、電子書籍で少しの損はあっても、生き残れるとは思います。ただ書店は悲惨なことになる。なるというか、悲惨そのもの。それまでの客が電子書籍ユーザーになることで書店の首を絞めていくことになってしまう。本は読みたい、書店で買いたい、書店にはない、すぐ読みたい、電子書籍ならすぐ読める、電子書籍の方が安い、そういう複雑な要素から成り立つ、二律背反、ジレンマが僕には嫌に重く感じられますね。感傷的すぎるだろうか。
僕の生活圏にある個人経営の書店は、棚がほとんど充実せず、ただ本を取り寄せる業務をする店になってます。僕はほとんど利用しませんが、今、気になっていることがあります。それは、アマゾンで値段が上げられている「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」の文庫本を定価で取り寄せることが、この店に果たしてできるのか、です。近いうちに実験してみよう。
底力を見せる時だぞ!(なんの?)
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