第52話 ヨルシカに見る「音楽と連結するもの」

将棋ウォーズで遊ぶ時、なんとなく早見沙織さんのミニアルバム「GARDEN」を聞きながら指してるのですが、最近、このミニアルバムを聞くと、自然と将棋のことを考えるようになった。ちなみにこのミニアルバムを選んでいるのは、秒読みとの相性がいいからです。将棋を指してる間はBGMなんて気にしないのですが、気が急かなくて良い。まぁ、将棋ウォーズそのものにもBGMがある訳ですが。

普段、書き物をする時とか本を読む時にも音楽を聞いたりすることが多くて、これは前からなのですが、書く作業と聞く音楽の関係性が知りたい気持ちがあります。本当は書く内容と聞く音楽には大して関係性はないんでしょうけど、それでも日記をつける時に、その日に何を聞いたか、記録してたりもします。

音楽と気持ち、記憶が繋がるのは自然なことですが、面白いのは音楽を聞き直すことで、良い状態の精神状態を呼び込めるような気がすることです。別の形では、例えばアニメのテーマソングを聞くと、そのアニメの作品世界、空気みたいなものが頭の中に蘇ることもある。音楽って、音と歌詞だけで作られるのに、空気を伴った芸術なんですよねぇ。この空気は理屈じゃない。感覚、というか。

僕は最近、かなり聞く音楽を限定していて、ヨルシカがかなり充実している。アルバム「だから僕は音楽を辞めた」を先に手に入れ、もうこれは追いかけるしかない、ということでアルバム「エルマ」、アルバム「盗作」を手に入れて、聞き込んでますね。

面白いのは、ヨルシカの「だから僕は音楽を辞めた」、「エルマ」は、同じ作品世界で、エルマとエイミーという二人の物語なんですが、作品世界をリスナーに提示した後、さらにリスナーが思い描く余地もちゃんと残っていて、作品世界が曲と歌詞を超えていく、という仕組みです。本当は初回版を手に入れたいのですが、高額なので諦めてしまいました。しかし、歌詞に「エルマ」、「エイミー」が、出てくる度に、この二人のぼんやりした像が浮かびます。音楽と物語をまず連結させ、それがリスナーの世界と連結する。この構造は凄いなぁ、としか言えません。

ヨルシカに関して言えば、作中世界にいい具合に闇が含まれていて、何故かそれが作品世界への没入、共感を促進させることがあることは、ものすごく良い。僕自身の暗いものが引きずり出されて、軽く打たれて、じわじわと響いていく、それも隅々まで響いていくような気がする。

暗いのって、間違い、歪なんだろうけど、僕の中ではある種のアイデンティティーではないかな、とも思ったりしますね。

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