第25話 大相撲力士が十五日で疲労困憊する理由

かれこれ10年は大相撲を見てきましたが、千秋楽になると力士の談話で、「疲れました」という言葉が結構、聞こえてくる。

朝に稽古しているとはいえ、真剣勝負は一日に一番、時間は長くても1分くらいで、どうしてそんなに疲れるのか、ずっと不思議だった。そんな程度の体力じゃないはずなのに、何がそこまで疲れさせるのか、すぐ想像できなかった。

それが急に理解できたのですが、それは僕が将棋ウォーズで無課金で一日に三局指すと、精神的に疲れていて、それはつまり、勝負というものが重くのしかかるんですね。勝ちたい、負けたくない、今度は負けるかもしれない、また負けるかもしれない、そういう圧力が勝手に生じて、疲れるのです。

力士の世界は完全な番付社会だし、一年間の90回の勝負で、勝てば出世して、負ければ落ちる。この厳しすぎるほどの価値観、絶対的な仕組みが、体力なんて関係ないほど、精神を疲れさせるのでは。この一番に勝てなければ幕内から十両に落ちる、みたいな最終局面じゃなくても、あと何番落としたら落ちる、と思うだけで、土俵に上がるのが怖くなると思う。そしてそれから誰も逃げられない。勝ちさえも、あるいは救いじゃないかもしれない。

僕の人生では、本当の勝負って今までなかったんだな、と実感しました。

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