それはある晴れた日の午後に死体と出会ったような
大根入道
さまよう
それはある晴れた日の午後に死体とであったような
土手の散歩道を歩くのは日課だった。
昔に比べて人が多くなり、ジョギングする老若男女の姿にすれ違うのに慣れたのは、さていつの頃だっただろうか。
昔は土手を往く人々というのは、人の散歩や犬の散歩だったような気がする。
気がするというだけで、確証はなく、古い記憶はタライの水の中に落ちたインクのようにぼやけている。
ぼけるにはまだ遠い年齢だが、日々過ぎゆく時間をふと思い出すことが多くなるにつれ、若さとは遠くなったと思うようになった。
ぶるりと震えた。
陽射しがあるので寒さはそれ程でもないだろうとカイロをしてこなかったのは失敗だった。
先を進んでもカフェなどがある訳でも無し、寒風の中で自動販売機のコーヒーを飲むという想像に首を振り、踵を返した。
歩いて歩いて、気まぐれを起こして公園へと足を進める。
いやいや、これも近道だからと、自分に意味のない言い訳をする。
枯葉を踏みしめて歩いて、出口が見えた時だった。
茂みの中に靴が見えた。
その二足のスニーカーの爪先は空を向き、倒れず真っ直ぐに断っている。
中には黒ずんだ靴下が突っ込まれ、それにも中身が入っているようだ。
ぴくりとも動かない。
死体だ。
首をひねって、上を見て、思い出したように尿意を覚えた。
まあそういう事もあるだろう。
不便なことに、この公園にはトイレは無かった。
公園からゴミ箱が消えて十年以上が経つ。
だからトイレも無くなるだろうか、など考える。
少し足早にして。
家に帰った。
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