第63話 みりん完成

 浮遊大陸に魔力を流し、とりあえず2・5ヘクタールくらいの土壌を水田からサトウキビの育成に適した地質に変えた。

 そして全ての茎を対物理結界の上に乗せると、地質を変えた土壌に等間隔に散らばれと念じながら空中に放り投げた。


 DEX任せ法、使うの久しぶりだな。

 もちろん今回も、念じた通りサトウキビの茎は良い感じに散らばってくれた。


「みんな、茎が散らばってる範囲だけに雨雲を出してくれ」


「「「はーい!」」」


 恵みの雨雲を出してもらうと、成長促進剤を少しだけ投入し、芽出しを行う。


「ありがとう、雲は一旦止めてもらって大丈夫だ。またAGIのシンクロ率を最大に戻してくれ」


「「「おっけ~い!」」」


 芽が出た茎(通称二芽苗)ができると、俺はそれをまたフルAGI+「単純作業自動化」によりしっかりと植え付けていった。

 あとは生育完了までまた成長促進剤で時を進めるのみ。

 シルフたちにもう一回雲を出してもらって、収穫できるくらいの高さになるまで成長促進剤を撒いた。

 育ちきったサトウキビは、平均して高さ5メートルちょいある感じだ。


「思ったより大きいな」


 前世では、栽培するサトウキビの高さはだいたい3メートルだったはずなので、それに比べれば大幅にデカいと言うことができるだろう。

 節から次の節までの長さをだいたい20センチと仮定すると、一本のサトウキビから13個ほどの二芽苗を作れる計算になるので、あと二回二芽苗作り→植え付けて育成を行えば大陸一面をサトウキビ畑にすることができるな。


 というわけで、それをやっていこう。

 一連の流れを二回繰り返し、1320万本の二芽苗を用意する。

 それらをしっかり植え付けてから成長促進剤を降らすと、大陸一面に5メートルのサトウキビの茎がそびえ立った。


 離島にて車両工場建築法でハーベスターを作り、ハーベスターてサトウキビを収穫する。

 アイテムボックスに収納してみると、収穫量は40025トンだと分かった。

 サトウキビには、今までやってきたように二芽苗を作ってそれを植えて栽培する「新植栽培」の他に、収穫した後の根から芽を出して再度成長させ、収穫する「株出し栽培」という育て方もある。

 せっかくなので、この期にやれるだけ株出し栽培を繰り返すことにしよう。


 株出し栽培は新植栽培に比べて楽な代わりに、繰り返せる回数に限度があり、その回数は通常3~5回だ。

 だが俺の場合は、松茸の件もあったからな。

 繰り返しの限度回数は鑑定でしっかり調べておいた方がいいだろう。


「鑑定」


 やってみると、こんな結果が表示された。


 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 ●最適化サトウキビ

 類まれなる能力を持つ究極の農家・新堂将人がシルフと共同開発した改良サトウキビ。

 糖度が高く、温暖湿潤気候の中でも比較的緯度が高い地域での生育に適している。

 百回までの株出し栽培でクオリティが下がらず栽培可能。

 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 やはり、鑑定しておいて正解だった。

 まさか百回もの株出し栽培が可能とはな。

 あらかじめ知っていなければ、まずやってみようと思わなかったことだろう。


 また今回も「類まれなる~」の一文がついてしまっているが、砂糖として精製したものにはこの説明はついてこないはずなのでまあ今回は許すか。

 鑑定内容をどうにかする方法、またいつか調べておこうかな。

 できたらできたで、悪用すれば虚偽の内容を表示できるという意味でマズい気はするが。


 そんなことより、とりあえず今はサトウキビの方が優先だ。

 このままいくと成長促進剤が足りなくなってしまうので、ダビングカードを百枚ほど使って成長促進剤400HA1Yをダビングする。

 そして、降雨→収穫のループを百回繰り返した。


「じゃ、これ以上は繰り返せないから還しの雨を降らしといてくれ」


「「「おっけ~い!」」」


 シルフたちに還しの雨で畑を初期化してもらっている間にアイテムボックスで収穫量を見てみると、4002435トンものサトウキビが収穫できていることが分かった。

 トンで7桁とはこれいかに。

 なんというか……ここまで来ると、いつもの工場を増設するよりはいっそ広い離島を一個作ってそこに工場を移転した方が良さそうだな。

 そうしないと、製糖に延々と時間がかかりそうだし。


「時空調律」でどうにかすれば良い問題でもあるような気はするが……思い立ったが吉日、せっかくなのでやるとするか。


 MPを2500ほど注ぎ、25ヘクタールの正方形の離島を一個作成する。


「特級建築術」


 その土地をほぼ目一杯使うサイズで、まずは今までの工場をそのまま広くしたものを7階分全て建て始めた。

 これでもう前の工場がいらなくなるので、そっちは解体して不動産屋に土地を売却するとするか。

 7階までの建築が終わると、続けて8階部分に製糖工場を増設した。

 早速、出来上がった工場にてサトウキビを投入し、機械を動かす。

 今回は上白糖、グラニュー糖、三温糖の三種類の砂糖を等量ずつ作ることにしてみた。


「時空調律」


 デカい工場であっても長時間かかるくらいの量なので、精製時間をスキップする。

 全部の精製が終わった後、アイテムボックスにしまって計量してみると、三種類の砂糖がそれぞれ213463トンと廃糖蜜が3362045トン得られていることが分かった。


 米6トンしかないのにこんなにあってもって量になってしまったな……。

 砂糖も今までの作物全部足した重量を余裕で超えるくらいできてしまったし、当分はもうサトウキビ生産をしなくて良さそうだ。

 ま、アイテムボックスの容量は無尽蔵なので別に問題ないんだが。

 ともかく、とりあえずこれでみりんの原材料は全て揃ったので、みりんを作っていくことにしよう。


「特級建築術」で9階部分に醸造アルコール生成設備を作っている間に、焼酎を作った時の酵母の残りと成長促進剤を使って大量の酵母を培養する。

 9階が完成したら廃糖蜜と酵母を投入し、1トンほどの高純度の醸造アルコールを作り出した。

 そしたら次に、米焼酎作りだ。

 みりん作りには米と米焼酎をほぼ同じ質量の比率で使うこと、米からは約三倍の質量の米焼酎ができることを考慮し、米焼酎作りには1・5トンの米を使うことにする。

 その分の米を、6階の酢工場の一部である焼酎を作る部分に、麹や酵母とともに投入した。

 麦焼酎を作った時と同じ容量で、米焼酎を完成させる。


 ここまで来たら、ラストスパートだ。

 10階に「特級建築術」でみりん工場を増設し、材料である米、水、米焼酎、麹、醸造アルコールを投入する。

 蒸米や製麹、撹拌などの工程を終えて醪ができたら、熟成期間を「時空調律」でスキップした。

 圧搾、火入れの工程をやっている間に、工場じゃない方の離島にて充填用の瓶を「超級錬金術」で作成する。

 みりんが瓶に充填されたら、全行程終了だ。


 アイテムボックスに収納してみると、今回できたみりんが充填された瓶は4806本。

 瓶が500ミリリットル入りなので、約2400リットルのみりんができた計算になるな。

 さっきまで見てきた廃糖蜜の桁数や単位からすれば少なく思えてしまうが、冷静に考えて結構な量が生産できている。


 じゃ、待望の調味料が出来上がったわけだし。

 今日の夕食は、今までみりんが無いことを理由に諦めていた料理を何かしら作って食べることにしよう。

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