第58話 車両を建築する方法
次の日。
朝起きて身支度を済ませると、俺は米の栽培のために浮遊大陸に向かった。
昨日作った水田に、アイテムボックスにある「アミロ17」の苗を全て植える。
それからシルフたちに恵みの雨を降らせてもらって、成長促進剤400HA1Yを必要な分だけ投入した。
穂が実ると、全部収穫して工場へ。
今回は工場では脱穀のみを行った。
――ここまでが、本格栽培のための下準備だ。
昨日品種改良した「アミロ17」の苗の数では、畑全体で大々的に農作をするには全くもって足りなかったからな。
まずはこうして種籾の確保から始めることにしたわけだ。
アイテムボックスに籾を入れ、単位を「粒」にして個数を計ると16527粒あることが分かった。
これを22で割ると……だいたい750株分くらいある計算になるか。
400ヘクタールの畑全体で育てるにはまだまだ足りないので、種籾作りはもう何巡かする必要がありそうだな。
再び浮遊大陸に移動したら、次にやるのは苗作りだ。
対物理結界で箱を作り、そこに水魔法で水温10度の水を入れると、その中に籾を全部投入した。
「時空調律」で十日間を経過させ、種子の浸漬を終える。
その後水温を30度に上げると、再び「時空調律」を使って12時間ほど飛ばし、軽く発芽させた。
次はこれを畑に蒔き、一定のところまで育成するわけだが……それをやるには、水田ではなく育苗土という土壌を作る必要がある。
浮遊大陸に魔力を流し、水田とは別の場所の一部を育苗に適した土壌環境に変えた。
そこに発芽させた種籾を蒔いたら、シルフたちに恵みの雨を出してもらう。
成長促進剤をちょろっと投入して、草丈が15センチくらいになるまで育てた。
「じゃあみんな、全部根っこから引っこ抜いて、22本ずつ束にしてあっちに植えてもらえるか?」
「「「はーい!」」」
俺はシルフたちに頼んで、育った苗を水田のほうに植え替えてもらった。
「そしたら雲もそっちに移動して、また雨を降らせてくれ」
「「「おっけ~い!」」」
水田に植えた稲を、再び成長促進剤入りの恵みの雨で、今度は穂が実るまで成長させる。
それを全部収穫すると、また工場に移動して全部脱穀した。
また籾をアイテムボックスに入れ、単位を「粒」にして収穫量を確認すると、今度は1204704粒収穫できていることが分かった。
粒単位で数えるとだいぶ膨大な収穫量に思えるが……これでもまだ54760株分、作付面積で換算すると約32アール分にしかならない。
まだまだ先は遠いな。
同じ手順をもう一度繰り返すと、次の収穫量は85534135粒、作付面積換算で23ヘクタール分くらいの種籾を収穫できた。
更にもう一巡繰り返すことで、今度は1600ヘクタール分、すなわち4回稲作ができるくらいの種籾を確保することができた。
これで次の収穫分からは、ようやく食用として精米まですることができるな。
ゴールが近づいてきたことに意気揚々としつつ、俺は本日最後の稲作に取り掛かることにした。
いつもの方法で苗まで作ると、浮遊大陸に魔力を注ぎ、世界樹やピュアカーボンツリーが根を張っている場所を除く全土を水田の地質に変換する。
シルフたちやヒマリと手分けして田植えを終えると、いつもの雨と成長促進剤で一気に収穫時期まで進めた。
そしたらみんなで手分けして収穫を……と思ったが、400ヘクタールもの収穫となるとみんなの負担も馬鹿にならないよな。
作物がバラバラだとそれでも手作業で収穫するしかないかもしれないが、一面に同じ植物だけ植えてる今なら、コンバインとかで一気に収穫してしまったほうが楽かもしれない。
問題は、この世界にコンバインなどありはしないことだが……それについては一個、解決できそうな案を思いついている。
特級建築術だ。
もちろん、特級建築術は「建築」術なので、それで車両を作成することは多分できないだろう。
しかし、一旦特級建築術で全自動の車両工場を作り、その工場を稼働させてコンバインを作るという方法でならコンバインが手に入れられるはずなのだ。
どうせならそのコンバイン、AI搭載で自走するようにしたら運転も必要なくて楽だろうな。
早速試してみよう。
油田の離島に魔力を流して地質を普通の土地にすると、そこに車両工場を建築する。
建築が完了したら、電源を入れて工場を稼働させた。
工場に「時空調律」をかけ、コンバインが完成するまでの時間を飛ばす。
すると、実時間にして1分と経たずコンバインが出来上がった。
浮遊大陸本体に持ち運び、起動してみると、コンバインはひとりでに稲刈りを始めた。
やはり、このやり方で上手く行ったな。
今後もプラスチックを作るのに油田は必要なので、車両工場は解体して離島の地質も元に戻した。
稲刈りの時間も……自分が操作しなくていいなら、いつもの魔法で短縮することが可能だな。
「時空調律」
数秒と経たず、400ヘクタール分の稲の収穫は全部完了した。
工場にて、今回は精米までの全行程を行う。
アイテムボックスに入れて収穫量を測ってみると、2486トンあることが分かった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます