第19話 すごい野菜がとれた
収納魔法の入り口の空間の歪みを開きっぱなしにし、ドライアドたちにそこに収穫物を入れるようにしてもらって、収穫作業を進めていく。
15分もすると……俺たちは、赤く実っていたトマトと指定した区画内の枝豆を全部収穫することができた。
これで残るは、まだ青いトマトと、大豆として収穫する区画に実っている枝豆のみ。
これらについては、成長促進剤のクールタイムである4日が経過したら、追加散布をして収穫するとしよう。
さて、となると問題は、畑の作物の茎をどうやって支えるかだな。
今は暫定的な処置として、スキル「重力操作」で重力を減らすことで茎を自立させている。
だが……流石に4日もの間「重力操作」を継続するわけにはいかないだろうし、ちゃんと支柱を用意してやる必要があるだろう。
前園芸用品店に行った時は、お金の心配から支柱の購入を見送ったが……ある程度作物を収穫できた上に、「yes!シンデレラクリニック」の売却益も入りそうな今、手持ちのキャッシュくらいは使いきってしまって構わないな。
というわけで、俺は「飛行」で園芸用品店まで移動し、200万イーサをはたいて必要な分の支柱を一気に購入した。
そして畑に帰ってくると、運搬のため一旦アイテムボックスに入れていた支柱を取り出す。
「みんな……これを一本一本、苗を支えるように立てていくことってできるか?」
「「「おっけー!」」」
ドライアドたちに頼むと、支柱立てを手伝ってくれるとのことだったので、俺はみんなに手伝ってもらいながら支柱を立てていくことにした。
種まきのことを考えれば……全部の支柱を適当に投げれば、全部ちょうどいい位置に刺せる気もしなくはないのだが。
ミスって茎に傷が入ったりしたら悲しいしな。
ドライアドたちが作業を手伝ってくれるのなら、手作業でした方がいいだろう。
そうして俺たちは、30分くらいかけて支柱立ての作業を終えたのだった。
◇
そして、四日後。
クールタイムも経過したので、いよいよ今日は再散布だ。
さて、今日の散布だが……四日前とは違って、今回は一つ工夫をしなければならない。
前回は全体に均一に散布すればよかったが、今回は作物の種類によって散布量を変えなければならないのだ。
例えばトマトの方は1週間も成長を促進させられれば十分なので、成長促進剤の散布量はほんの少しでいいが……大豆の方はあと一か月半くらいは成長促進させたいので、(1/4の面積の畑に用量の半分ということで)一缶の1/8くらいは散布する必要がある。
これをきちんとやるには……トマトへの散布と大豆への散布は、分けてやるのがいいだろうな。
「みんな、トマトが生えてるところにだけ雨を降らせるような雲って呼べるか?」
「「「もちろんだよー!」」」
ということで、まずはドライアドたちに、トマトにだけ雨が降るような形の雲を作ってもらった。
雲が完成すると、俺は雲上部の注入口に、成長促進剤をほんの少し注入する。
しばらくすると、成長促進剤が降りしきったことで、青みがかっていたトマトが全て赤くなった。
これでトマトゾーンは完了だ。
「じゃあ次は、まだ収穫してない大豆のあるところに雨を降らせてくれ」
「「「おっけーい!」」」
次に俺は、そう指示して雲の位置・形状を変えてもらった。
雲の移動・変形が終わると、再度俺は注入口に成長促進剤を注ぎ込む。
しばらくすると……成長促進剤が効いて、緑色だった枝豆のさやが茶色くなった。
これで、こちらも大豆として収穫できることだろう。
「じゃあみんな、収穫するぞー」
「「「よーし!」」」
ここまでくれば、後は4日前と同じだ。
俺たちは手分けして、全てのトマトと大豆を収穫し終えた。
◇
収穫を終えると、俺はアパートに帰宅した。
アパートに帰宅すると……まず俺は、「アイテムボックス」で収穫量を確認することにした。
「アイテムボックス」
画面を開くと……そこには、トマト、枝豆、大豆をそれぞれ表す3つのアイコンが表示された。
トマトのアイコンの上には「29t」、枝豆と大豆のアイコンの上にはそれぞれ「892kg」「984kg」という数字が添えられている。
この数字はおそらく、採れた作物の重量を表しているんだろうな。
トマトは29トン、大豆と枝豆はそれぞれ1トン弱収穫できたということか。
金貨を収納してある時には、アイコン上部に枚数が表記されたので、それと同じ要領で確認ができるかと思ってやってみたのだが……うまくいったようだな。
だいたいの収穫量が分かっていれば、明日ギルドで買い取ってもらう時も話がスムーズに進むと思うので、やってみて正解だった。
必要なことは全部分かったので、俺はアイテムボックスの画面を閉じようと思った。
が、その時……。
「いや、待てよ」
唐突に俺は作物の鑑定をしてみたくなったので、それぞれの作物を一個ずつアイテムボックスから取り出すことにした。
鑑定すると言っても、特に深い意味合いはない。
ただ、もし栄養価とか鮮度とかが表示されたら面白いなと思いついただけのことだ。
「鑑定」
そうして軽い気持ちでやってみた鑑定だったが……俺はここで、衝撃の事実を目にすることとなってしまった。
枝豆は至って普通だったのだが……それ以外の二種の野菜の鑑定文に、とんでもないことが書いてあったのだ。
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●不老トマト
究極のアンチエイジング作用を持つ成分・ウルトラリコピンを大量に含むトマト。1週間に100グラム摂取していれば、老化を完全に打ち消せる。余談だが、味も最高品質
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●神眼の黒豆
究極の視力改善効果を持つ成分・ウルトライソフラボンを大量に含む黒豆。100グラム以上摂取するともれなく視力が2になる上、スキル「望遠」が手に入る。余談だが、味も最高品質
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……一体全体なんでこんな作物が育ってるんだよ。
いや……この世界では、こんな医薬品だとしても反則級な効果がただの野菜についてるのが普通なのか?
よく見ると、成長促進剤が過剰だったのか、大豆を収穫したつもりが黒豆になってしまっているが……こんな効果を目の当たりにしては、それすらどうでもよく感じてしまうぞ。
「味が最高品質」なんて、もはや鑑定文にすら余談と言われてしまっているな。
まあ少なくともそこが保証されてるなら、値いい値段が付くとは思って良さそうだが。
ちょっと明日、農業ギルドに行ったら色々聞いてみないとな。
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