みんなネタ将

清水らくは

#アルパカもネタ将

1-1


 目の前が金色に染まる、という経験をした。

 つらい1局だった。相手玉はとにかく堅い。ただ、攻め駒がほとんどなかった。耐えて耐えて耐えて。他の対局がすべて終わり、皆が注目しているのが分かった。そんな中、なんとか勝ち切ったのだ。

 次点2回。順位戦には参加できないけれど、それ以外の棋戦で戦うことができる。

 プロに、なれるのだ。

 まずは家に電話した。そして一応師匠にも。

 18歳四段。我ながら上出来ではないか。

「ちょっと」

 そんな僕の前に、仁王立ちになっている人がいた。表情も仁王のようだ。

「福田さん」

「勝ったのね」

「あ、はい」

「まずは私に知らせるべきじゃないの?」

「え? いやまあ、えーと」

「四段は先を越されたようね。プロは私が先ってことは変わらないけど……対等の立場になったと認めてあげる」

「それはどうもです」

「その……お……」

「お?」

「おめでとう。フリークラスのまま終わらないように、せいぜい頑張って」

 ぷい、と後ろを向き、そのまま福田さんはいなくなってしまった。

 そして、入れ替わりに会長が現れた。塩田九段。ダンディなおじさまだが、こうやって笑顔で近づいてくるときはいつも何か厄介ごとを頼まれる気がする。

「おめでとう、加島君。いやあ、降級点取った時はどうしようかと思ったよ」

「ありがとうございます。なんとかプロになれました」

「うん、まさにグッドタイミング」

「はい?」

「加島君、アルパカをやらないか?」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る