元日の雪、短編

@rutorutoM

元日の雪、

君を見ているとイライラするから僕は君を大好きなんだと思う。君の楽しそうな笑顔を見てると胸がざわめくから君に黙ってほしいのだと思う。きっと僕らは出会わなかった方がよかったのだと思う。

いつの日か気づいた時には僕は僕じゃなくなった様に思ういつの日か一人が好きになった。多分一人が好きじゃないから。周りがいると、僕なんかよりずっとすごい人がたくさんいるから。でもそんな僕のことを誰も好きになってくれないから。そんな器じゃないから。世界は皆平等で不平等。

一人は僕の自惚れだ。一人は世界への隔絶だ。一人なら、僕は僕しかいないから。だから僕は僕を愛せる。馬鹿げてる。知っている。

海を見た。元日の昼前に、風は強く雪は積もっていた。雪は好きだ邪魔はものの上に積もり、それを隠してしまう。ならいっそ僕に積もって隠して仕舞えばいいのに。丘を登って海を見た。海はたいそう濁っていた。空は曇っていた。その一面の灰色の中にひとつだけ穴が空いていた。そこからは日差しが差し込んでいた。その隙間の雲はたいそう白かった。あの穴の部分にも風は吹いている

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

元日の雪、短編 @rutorutoM

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ