変化7.黒ギャルの決意
そう、ウチとタケシの初体験は失敗に終わっているのだ。それは、今思い出しても恥ずかしい記憶だ……。
あ、誤解の無いように言っておくけど失敗したこと自体が恥ずかしいんじゃないよ。
恥ずかしいのは別な理由がある。それは……。
タケシの全裸見たのって、それが最初で最後なの!!
彼氏の生まれたままの姿を初めて見た記憶って、思い出したら恥ずかしくなるっしょ!! あ、ダメ、また思い出しちゃう……。
あーもー……顔あっついよ……。もうあれから半年以上経ってるのに……。いまだに恥ずい。
確かあれは、そろそろ受験も迫ってくるし、二人とも勉強の追い込みで忙しくなる少し前……。
これからはしばらくデートもできなくなるねぇ、せめて二人で勉強会しようかなんて話をしてた時だ。
タケシが何の気なしに最後になんか思い出つくりたいねーって言って、お互いにアイディアを出し合って……。
最終的にその……初体験を……してみよっかってなったの。
だけど、結果はダメだった。
互いに繋がりたいという思って、色々と準備して、二人っきりの状況を作って、とってもいい雰囲気になってしようとしたのに……。
ダメだったー!! うわーん!! ダメだったのー!!
どうダメだったのかは詳細は省く。色々と二人の名誉のために省かせてもらいたい……。
うぅぅ……でも……今思い出しても凹むよぉ……。
でも、当時は今の比じゃないくらいに落ち込んでた。実はタケシは、ウチに女としての魅力を全く感じていないんじゃないかとさえ考えちゃった。
でも、ウチを前にして泣きそうになって謝る彼を見て、そういうわけじゃないというのは分かった。というか多分タケシ泣いてた。
泣いてるタケシもかわい……じゃない。きっとその辺は、ウチには分からない男の子特有の何か事情があったんだなと思う。
だからウチに魅力を感じて無いわけじゃないんだと言った時の彼を信じた。
まぁ、初体験はできなかったけどお互いの裸を見たし一歩前進したと前向きに考えてた。
だけど、結果として初体験がダメだったウチ等はそのままズルズルとその機会を失って、最終的には遠距離恋愛で離れ離れになってしまった。
お互い気まずい気持ちにならず、大好きという気持ちを失わなかったのは奇跡に近かったかもしれない。
受験勉強が迫ってて、気持ちを切り替えられたのも大きかったんだろうな。
そしてお互いに大学に合格して、久しぶりに彼の部屋に行ったときに……ウチはこれを見つけた。
見つけたと言っても漁ったんじゃなくて、それは本当に偶然だった。
お茶の用意をすると言って出て行った彼の部屋にウチしかいない時、彼の引っ越し荷物の入ったダンボールが崩れたのだ。
そして一番下にあった小さなダンボールが倒れ、その中から大量のその……エッチな本とかディスクが出てきた。
ちっちゃいダンボールにこんなに入ってたの?! ってくらい入ってた。本当にビックリした。
だけど本当の驚きはその後だ。
ウチは目を疑うと同時に、その小さなダンボールの中を見ると……中は黒ギャル系のエッチな物がたくさん入っていたのだ。
その時のショックといったら無かった……。
鈍器で頭を殴られたような衝撃というのは聞いたことがあるけど、まさか自分で体験するとは思わなかった。
だってその本の中の女の子たちは、
高校にもほとんどいなかった、短いスカートに露出した肌、アクセサリーを身に着けて抜群のスタイルを惜しげもなく晒す……。
そのダンボールの中は黒ギャルで溢れていた。これが男のロマンというものなんだろうか?
明確な浮気じゃないけど、なんだか悲しくなって……だけどそれと同時に、もしかして……これが渋木君の性的興奮を促すものなのかとウチは思い至ったのだ!
それに気づいた時、ウチの心の中の迷いという名の暗闇に光が差したような気がしたのだ。そして思わず、その中の一番上の本を手に取っていた。
いや、まぁ……手に取ったのは黒く日焼けしたギャル系だったから光ってはいなかったけど……。まぁ、肌が艶々と輝いてはいたから光が差したと思っておこう。
本当は持って帰るつもりは無くて……その場で勉強のためにちょっと読んだら戻そうかと思って。
だけど音に慌てたタケシが部屋に戻ってきたから、ウチは思わず小さなダンボールだけを元に戻して、手に取った一冊を思わずカバンに入れて持って帰ってきた。
その場で聞けなかった。
本当はこういう人が好みなの? とは。
もしも聞いてそうだと言われたら、立ち直れなさそうだったからだ。
正直、タケシと離れることに不安はあった。
彼の可愛さに他の女が気付いたらきっと告白されるんじゃないかという気持ちは前からあった。
だけどそれに加えて、この本みたいな黒ギャルが現れて、彼の気持ちがそちらに傾くかもしれないという不安が追加されちゃったのだ。
だけどもう遅いのだ。ウチと彼は遠距離恋愛になる。
だから、タケシは浮気を絶対にしないと信じて……彼から離れるこの機会に……
「渋木君……喜んでくれたかな? 明日からも毎日会えるから楽しみだなぁー」
ウチは昔の呼び方で小さく彼を呼ぶ。もっともっと、彼を喜ばせてあげたい。離れていた分、その気持ちは強くなっていた。
きっと喜んでくれたよね? あんなに黒ギャル物のエッチな物を持ってたんだし。
明日からだ!! 勝負は明日から!! 離れてたぶんいっぱいいっぱい色んな事をするんだー!!
拳を突き上げながら改めて決意し、とりあえずウチは胸元を強調した自撮り写真をタケシに送るべく、肌を磨き上げようと足取り軽くお風呂へと向かう。
そう……ウチはあの本のように……。
オタクに優しい黒ギャルになるのだ!!
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