第27話 ぶっ飛んだヒーロー

「まぁぶっちゃけるとね、盗撮と恐喝」


「なっ……!?」


「うん、流石のウチもビビったよ」


 ガチの犯罪を挙げられ、普通に俺は固まってしまう。アイツら……あそこまでクズだったのか?


「じゃあまず上村の方からだけど……これはね、証拠を掴めたのは、単に運が良かったからなの」


「運?」


「うん」


「いやダジャレじゃなくて……」


「えっ?」


 高円寺は特に意図して言ったつもりはなかったらしい……こういう時、自分だけ恥ずかしくなるよね。やめてほしいわ。


「……続けるよ? ウチが2人を調べている時にね……とある事件がウチの耳に入ったんだよ。あいのーんには色々と伏せておくけど……簡単に言うと、女子更衣室にカメラが仕掛けてあったって」


「えぇ……」


 ……それ普通に悪質だよな。全国ニュースになるレベルだぞ。


「そんな事件は見過ごせないと思ったウチは、一旦2人を調べるのは置いといて、そっちに協力しようとしたんだ」


「へぇ。高円寺は……正義感が強いんだな」


「よく言われる」


 ……サラッとそう返せるの凄くね?


「それでまぁ、先生に言うのが1番なんだろうけど……アイツら信用出来ないじゃん?」


「先生のことをアイツらって言うな」


 そんなツッコミをカマした俺だが……正直、俺の考えも高円寺寄りだった。


 まぁ……素晴らしい教師も必ずいるって、心のどっかでは思っているので、全部が全部否定している訳じゃないんだけど。


「だからウチらで犯人を見つけよーってなったんだ」


「でも凄い勇気だな」


「悪は……許せないもん」


「……」


 戦隊ヒーローみたいなこと言いますね……もしかしてそのバンダナって……いや。何でもない。


「それでこれも色々と省略するけど……ウチらは更衣室の前の扉にカメラをセットして待機してたら……見つけちゃったんだよねー。上村君が女子更衣室に入って行くのが!」


「えぇ……マジかよ……」


 元から信頼などしてなかったけど、見損なったぞカスB。そして高円寺はその光景を思い出したのか、ケラケラ笑う。


「あはははっ! 盗撮魔を盗撮するのって、結構楽しーんだよ?」


「そ、そうか……」


「あ、よかったら今度一緒にやる?」


「……遠慮します」


 高円寺のこと……頭のネジがぶっ飛んだ奴とは思っていたけど……本当にここまで飛んでるんだな。


「いやー。あれは運が良かったねー。ここで1個終わったもん」


「じゃあ……坂下は?」


「あー。あの人は大分悪い噂が立ってたからねー。そっちは比較的簡単に、証拠をゲットしたよ?」


「噂?」


 そんなのは聞いたことないが……もしかして俺が学校の情勢に詳しくないだけなのか?


「どんな噂なんだ?」


「それはねー。野球部の同級生を脅して、お金を奪っているって噂」


「えっ……本当か?」


 そんな噂、ジャイアンクラスじゃないと出ないだろ……?


「だからそれを確かめる為に、野球部の部室とかにカメラを仕掛けたんだけど……エグいの見ちゃったね」


「えっ……?」


「もーボコボコのボコよ。ホント、痛すぎて見てられなかったね」


「……」


 初めて高円寺は苦そうな顔をした。それから察するに……随分ひでぇことされたんだろうな。


「まー多分。あいのーんが停学になって、ストレスでも溜まっていたんじゃない?」


「……酷いな」


 被害に遭った人など全く知らないが……それが俺のせいだとしたら、少し申し訳なく思ってしまう。ごめんよ。


「……で。そんな2人の悪事の映像を無事ゲッチュしたウチは、それを動画サイトに投稿して……そのURLを書いた紙で紙ヒコーキを作って……職員室に飛ばしまくったんだー!」


「えぇ……?」


 やっぱりコイツ、頭のネジ200本は飛んでる……マトモじゃ出来ねぇよ。


「で。その後はなーんにも知らないけど。2人とも辞めちゃったのは確かみたいだよ?」


「そっ……そっか……」


 俺は驚きを超えて……もう若干引いていた。だってもうすげぇ怖いもん。


「でも高円寺……どうして。どうして俺なんかの為に、そこまでやってくれたんだ?」


「あー。それは別に勘違いしないで…………かっ、勘違いしないでよねっ!」


「言い直さなくていいから……」


 別にお前のツンデレは求めてないから……


「まぁーウチはね。悪いことしたのに、のうのうと生きている人間が気に食わないだけだからさ。それに……」


 そう言ってヒナノの方へ向かって……耳を塞いでいる手を引き離すのだった。


「ヒナヒナの悲しむ姿は見たくなかったもんね!」


「わっ!」


 ヒナノはビックリしたような声を出した。可愛い。


「やっ、ヒナヒナごめんね! 長らくあいのーん借りちゃってて」


「あっ、ううん。大丈夫だよ! 何話してたの?」


「ちょっとばかし猥談を」


「ワイダン?」


「おい」


 俺は高円寺に向かって拳を見せつける。


「高円寺……ヒナノに何を吹き込もうとしてんだ」


「さ、サーセン!! 許して!!」


「……はぁ」


 油断してると、エグいくらいの下ネタ言いそうで怖いわコイツ……急に走り出す子供みたいな怖さがある。


「……いやー。しかし、あいのーんが学校に居ない間のヒナヒナは、とっても寂しそうだったよ? ホント恋するお姫様みたいな……」


「ちょ……ちょっと! 心美ちゃん!!」


「あははー。ごめんってー!」


 ん……ヒナノの照れ顔も可愛いな。初めて有能なムーブしたんじゃないか、高円寺。

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