ギャル勇者メーシャちゃんに、まとめて全部まかせろし! 〜《ギャルのキックはジャッジメント》世界征服たくらむ邪神に『ガツン!』と右脚叩き込みます!!〜
第12話 『身体取り戻したら、またドラゴンのお肉食べないとだね!』
第12話 『身体取り戻したら、またドラゴンのお肉食べないとだね!』
そしてそれから数分後。
「は~い。おまちどうさま。ドラゴンの骨付きステーキと、シャワーレモンジュースね」
おばちゃんが注文したものを持って来てくれた。
ドラゴンのステーキは、何処の部分の肉かは分からないが、“骨付き肉!”という名にふさわしい見た目をしていて、ジュースは見るからに爽やかそうなレモンの炭酸である。
「でか! あーしの広げた手ふたつ分くらいあんだけど!」
メーシャはステーキの大きさに度肝を抜かれた。
「食べきれなかったら、持って帰られるように包むから言ってね?」
お持ち帰りの梱包のサービスをやっているようだ。
「は~い。……でも、がんばって食いきろ!」
メーシャは気合いを入れてガッツポーズをする。
「じゃ、ごゆっくりね」
おばちゃんは笑顔で去って行った。
『本当に食いきれんのか……?』
デウスが心配そうに言う。
「いけるっしょ!」
だが、メーシャの決心は固かった。
『無茶はすんなよ、持ち帰りできるんだからよ』
デウスの忠告はメーシャには届いていない。
「はい、ヒデヨシの分ね」
ヒデヨシ用に小さくカットされた肉の塊をヒデヨシに渡した。
「チウチウ!」
ヒデヨシが嬉しそうにそれを受け取る。
「それと、あーしはジュース飲むから水飲んでいいよ……。って、ヒデヨシの分の水あんじゃん!」
メーシャの水の入ったコップの横に、小さい水の入った容器が置いてあった。
『ああ、さっきおばちゃんが置いていってくれてたぞ』
「全然気付かなかった! おばちゃん、めちゃ気が利くじゃん!」
『プロ、だな。へへっ』
「っし! 準備万端といったところで、いっただっきま~っす!」
メーシャはドラゴン肉の端に出ている骨を両手で掴む。
「チッチウ~」
ヒデヨシもメーシャの掛け声にあわせてネズミ語で“いただきます”をした。
「弾力、すっご!? ぐぬぬぬ~……ぬんっ!」
メーシャは苦戦しつつも何とか肉を噛み切る事ができた。
『……どうだ、ドラゴンの肉は?』
メーシャが飲み込んだのを見計らって、デウスが感想を訊く。
「すんごい弾力で、噛み切るのに時間かかるけど、めちゃ美味しい。肉汁がほとばしる」
目をキラキラさせてメーシャが話す。
「くく……。それは良かったぜ」
そんな反応に、デウスも嬉しそうだ。
「うん。あんね、食感が独特なの。ブリブリって感じなんだけど、シャリシャリって感じで、噛めば噛むほど肉汁ジュワ~って。味も、旨味がガツンとくんね。なんだろ、豚肉と牛肉を混ぜて2倍にしたような味だ。塩加減も抜群で、今まで食べたお肉の中で一番スキかもしんない。てか、……マジでめちゃうまだし~!」
よほど気に入った様子で、メーシャはゴキゲンで肉にかぶり付く。
「チウッチウ!!」
ヒデヨシもお気にめしたようでどんどん頬張っていく。
『そうだ、普通のネズミは塩のかかったもん、やっちゃダメなんじゃなかったか?』
デウスがヒデヨシを気に掛ける。
「チュイチウ」
『ああ、その辺も考慮されて料理してくれてんのか。スゲーな』
どうやら、ネズミ用にヒトとは違った味付けがなされているらしい。
「口ん中がこってりしてきたな……」
メーシャが急に姿勢を正して言った。
『お、シャワーレモンジュースの出番だな!』
デウスが嬉しそうに言う。
「んじゃ、メーシャちゃんいっきまーす!」
そう言ってメーシャがジョッキを掴み、腰に手を当てて、ゴクゴクとジュースを飲んだ。
『で、どうなんだ?』
デウスは感想が聞きたくてウズウズしてしまっている。
「っぷはー! もう、純粋に、美味しい!」
メーシャが良い飲みっぷりで唸る。
『おいおいおい、それだけなのか? もっと、こう、あるだろう!』
デウスが凄く残念そうに訴えかける。
「え、なんで? 美味しいよ?」
メーシャがキョトンとした表情でデウスに訊く。
『察してくれよ……』
デウスはもう、とてもとても悲しそうな声を出す。
「何を? ハッキリ言ってくんないとわかんないって!」
『……俺様、身体が無いだろ。だから、せめて味の感想とか言ってくれねえとさ、想像して楽しむことすらできねえわけ……。視覚情報だけじゃ、足んねえよ……!』
デウスはもう、悲劇のヒロインの如く悲壮感を出してしまっている。
「か、悲し……! 分かったから、ね! 言うから、機嫌なおそ? ね! 身体を早く取り返せるようにも頑張るしさ!」
流石にメーシャもデウスのこの悲しみっぷりには少し引いてしまった。
『え……!』
メーシャの言葉に、デウスが嬉しそうに言う。
「そんな希望に満ち溢れた『え……!』は初めて聞いたわ。身体があったら絶対、目が輝いてるっしょ。あっははははっ」
どうやら笑いのツボに入ったらしく、メーシャは爆笑してしまった。
『そ、そんな笑う事ねえだろ……!』
デウスが少し恥ずかしくなってボソッと呟く。
「チウチー」
ヒデヨシが肩をすくめて言う。
『ったく……。ヒデヨシはメーシャに甘いんだよ』
と、言いつつデウスも笑う。
「ふー! 落ち着いた!」
暫く笑った後、水をひと口飲んだメーシャが深く息を吐いた。
『で、まずはシャワーレモンジュースの感想聞かせてくれよ』
顔が見えなくてもにやけているのが判りそうな感じでデウスが言う。
「……求められてやんの、めちゃ恥ずかしいんですけど」
メーシャが急に冷静になってぼやく。
『おい! 嘘だろ!?』
ちょいとオーバー気味にデウスが叫ぶ。
「ウソウソ! 言うし!」
どうやら冗談だったようで、笑いながらもデウスの反応を聞いてすぐに訂正する。
『俺様の心をもてあそびやがって……』
「んじゃ、飲むね」
デウスの言葉はスルーして、メーシャはシャワーレモンジュースをひと口飲んだ。
「えっとね、炭酸がしょわ~! って沢山くるんだけど、喉を通るとき、喉越しっていうの? が、滑らかで柔らかいの。んで、味はレモンの酸味が強いけど、少し甘みがあることで飲みやすくなってる感じだ。後味も結構スッキリしてて飲みやすいジュースだね。……こんな感じの感想で、どう?」
メーシャは出来る限り味を分析してデウスに伝えた。
『……ブラボー! 最高だぜ、メーシャ! お前の感想を通して、俺様の味覚にシャワーレモンジュースが再現されたようだ!』
デウス的には満点の感想だったようだ。
「そか、そりゃ良かった。んじゃ、好きに食べていくね?」
メーシャが一応デウスに確認する。
『おう! ヒデヨシも、好きに食べるんだぞ』
ゴキゲンになったデウスは、ヒデヨシにも声を掛ける。
「チウ……」
言われるまでもなく……。そんな風にヒデヨシは言ったはずだ。
「んじゃ、どんどん胃袋に入れてこー!」
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