やっぱこの人ミラライブで一番可愛いな
授業が終わって家に帰り、PCを開くととある一件のDMが届いていた。
アリシア・デ・ラスフォード:今度遊び行こ。いつ暇?
「誰?」
あまりにも普段の話し方と文章が乖離していたために一瞬乗っ取りか何かではないかと疑う。
狐舞サキ:それは全然OKっていうか大歓迎ではあるんですけど話し方どうしたんですか??
アリシア・デ・ラスフォード:サキの前で取り繕っても仕方ないと思うてな。嫌か?
狐舞サキ:全然嬉しいです。そちらはいつ暇ですか?私は明日から三日間は配信以外の予定はないですが
アリシア・デ・ラスフォード:ちょうどよいの。では明日、ここに来ておくれ
そのメッセージと共に送られてきたリンクにはとある施設の名前が。
ほう、これは楽しくなりそうだ。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「待ったかの?」
「いえ、私もちょうど今来たところです!」
「それはよかった。では参ろうぞ」
その施設の近くのカフェで待ち合わせをしていた私とアリシア先輩。
以前見た時と同じように和風の装いをした美人の表情は柔らかく、普段配信などで見るのとは印象が大きく異なる。かわいい。
「む、どうした?何か変か?」
「いえ、先輩があまりにも可愛すぎて見惚れてただけです」
「そ、そういうことをサラッと言うでない!!……そういう早紀も……今日も可愛いぞ?」
そう言って顔を赤面させるアリシア先輩。可愛すぎるだろ。おい。
このまま可愛らしい先輩を堪能していきたいところだが、こんなところでイチャイチャしていても仕方ないので二人並んで歩きだす。
「そういえば私は本名そのままだからいいですけど、先輩のことは何て呼んだらいいですか?」
「ふむ……妾の本名は
「めちゃくちゃ可愛らしい名前ですね!?結構意外かも」
「そうかの?親が音楽バカである故につけられた名前じゃよ」
「へぇ、だからVの名前もアリシアなんですか?歌手とかピアニストにアリシアって名前の人いましたよね」
「ほう、よく知っておるな。幼い頃からピアノだのオペラだのと音楽関係のことをさせられておってな、まぁ別に嫌いではないから良いのだが」
「いいですねぇ。じゃあ愛奏さんって呼んでも?」
「うむ。……と、ちょうど着いたな、ここじゃ」
二人の眼前にあるのはとあるテーマパーク。
多くの可愛らしいキャラクターを売りにしている企業、そのキャラクターたちが生活する世界をモチーフにして作られたテーマパークだ。
「ここ、前から気になってたんですよ」
「予約はしておる。早紀、早く行こう!!」
入り口に着いて中の様子が垣間見えると、明らかに愛奏先輩のテンション感が変わる。目の色が変わる。
「ちょ、分かりましたから引っ張らないで!って力強ぉ!?」
いつかの加瀬さんを彷彿とさせる膂力に、よろけそうになりながらも何とかついていく。
そういえばこの人一蹴りで人の背骨に損傷を与えるレベルだし、そりゃ強くて当たり前か。怒らせないようにしよう。
「見よ!!サキ、でかい猫じゃ!!写真撮ろう!な!!」
「はいはい、じゃあ私が撮りますから愛奏先輩は隣に……」
「何を言っておる!……おい、そこの下郎」
私の腕を引っ張ってマスコットキャラクターの隣に並び立つ愛奏先輩は、通りすがりの男性に声をかける。どうやら家族サービスで来ているらしく、奥さんと娘さんと思われる人たちが少し離れたところでベンチに座って休憩している。
「ぼ、僕ですか?」
「そなた以外に誰がおる。ほれ、妾たちの写真を撮るのじゃ。そっちからじゃと逆光になる故こちらからな」
「初対面でもそのスタンスで行くのかこの人。……あぁ急にすみません、少しだけでいいのでお願いしてもいいですか?」
「あ、えぇ、はい、大丈夫ですよ」
先ほどのテンションはどこへやら、いきなり傲慢そのものの態度で撮影を命じる愛奏先輩に困惑する男性、しかし親切に写真を撮ってくれた。本当にごめんなさい。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
その後色々なアトラクションやショー、ショップなどを見て回った私と愛奏先輩。私自身はそこまで熱狂的に好きというわけではないが、可愛い物を見てテンションが上がらないわけがない。あと、隣で子どもみたいにハイテンションで楽しんでいる美人がいるというのもデカい。最高に楽しい。
「ふぅ、もうこんな時間か。楽しいと時が経つのは早いものじゃのぅ」
「そうですねぇ。ずっとはしゃいでましたもんね」
「は、はしゃいでなどおらんわ!そういう早紀こそまるで子どものようじゃったが?」
今日の自分の言動を思い出して恥ずかしくなったのか、顔を逸らして赤面する愛奏先輩。照れてる時のこの人が一番可愛いんだよな。
「そりゃ友達とこんなところに来たらはしゃがないわけないでしょう。最高に楽しかったですよ」
「お主にそう言ってもらえたならこうして誘った甲斐があるというものよ。……さて、互いに今晩の配信の準備もあるじゃろうし、名残惜しいがそろそろ帰るとするかの」
「そうですね、また遊びに行きましょう!今度は一緒にどこかでディナーとかも行きたいですね」
「良いなそれ!妾、綺麗な夜景の見えるレストランを知っておるでな、今度連れて行ってやろう!」
「とか言いながら自分が行きたいだけなんじゃないですかぁ?」
私がニヤニヤしながら揶揄うと、愛奏先輩はギクリと擬音が聞こえてきそうな表情を浮かべる。
「やっぱ図星だ。てか愛奏先輩、前から思ってましたけど案外感情が表情に出るタイプなんですね。可愛すぎます」
「うるさい!最近結構気にしておるのじゃ!それに……」
「それに?」
「……ここまで感情を揺さぶられるのはお主と一緒の時くらいじゃからな、どう隠してよいか分からぬ……」
おい。なんだよこの可愛い先輩は。うわ、今日一顔真っ赤だ。抱きしめたい。
「ほれ、阿呆なことを言っておらんでさっさと帰るぞ!」
「はぁい」
普段の配信では絶対に見られない側面99%の今日の愛奏先輩。ああやって自分の前でだけ素を見せてくれるというのはやはり嬉しいものだ。
愛奏先輩と別れて1人で電車に揺られながら、今日撮った写真を見て思う。
綺麗な顔立ちで、普段は『カッコいい女性』という表現がぴったりの愛奏先輩。だがしかしカメラロールに残っているのはそれが崩れた可愛らしい笑顔ばかり。
最初は近寄りがたい雰囲気のある人だと思っていたが、こうして仲良くなると人の印象というのはこうも変化するものか。
……と思っていたら一件のDMが。
アリシア・デ・ラスフォード:今日は最高に楽しかったぞ!!また行こう!!あと他にも一緒に行きたいところはたくさんあるでな、これから色々一緒に出掛けようぞ!( ˙꒳˙ )v
「……」
最後の最後まで可愛いなこんちくしょう!!!!
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