第368話 国境線上の秘闘(その2)
騎士を志す者はなるべく早い時期に得意な武器を決めるのが望ましい、とされている。そして、最初から武芸百般の達人を目指してあれこれ手を出していると器用貧乏になりがちで、まずはひとつの戦法に通じるのが一人前の戦士になるための王道である、というのは騎士団にやってきた新人を鍛える教官ならば当然心得ていることでもあった。生徒の得手不得手を見抜くのは熟練の教師にも難しいことであったが、
「体格に合った得物を選ぶべきだ」
というのは世界中の指導者たちの一致した見解であった。つまり、大柄で膂力に勝る者は
「おい、見てみろよ」
「ありゃ一体何だ?」
武器をその手に握ったトールの姿を発見した老兵たちの驚愕は、嘲笑へと徐々に変化していった。敵の頭領に対し礼を失した態度を取るのは騎士としてあるまじきことだとわかっていたが、戦争を生き抜き老年に達した彼らであっても未だ見たことのない奇妙な光景に噴き出さずにはいられなかったのだ。
トールの武器、それは鋼鉄製の
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