最終章「そして『春』がやって来た」
89.ショコラとの思い出語り(1)
その日、ハルは珍しく自室で本を読んでいた。すると開いた窓から暖かな春風がぴゅう、と舞い込んできて、ハルはそれを感じた途端あることを思いだしたのだ。
「そっか、もう1年経つんだ」
ハルは去年の今頃確かトラックに轢かれて死んで女神様に色々頼んでここに来たことを思いだした。
今も昔も読書好きなハルは「何の悩みも無く読書させてくれ」と願い、ここに来たのだ。
「最初、このお屋敷を買ったときは、誰もいなくてしかも死ななくていい体だったからさいやー、ぶっ通しで読みまくったよね」
「で、あの後ワタシに怒鳴られたんだろ? 食わず飲まず寝ずでよく読めたって」
「そうそう……ってショコラさん!?」
ハルは驚いて後ろの方を見る。そこにはすました表情のショコラが立っていた。
「な、何でここに……?」
「珍しく図書館来ないから、でなんだ? 思い出に浸っていたのか?」
「まぁ、そうだね。なんやかんやここに来て設け1年経つから」
「あー……そうか、オマエがここに来てもうその位経つのか……」
「うん、色々あったなぁって」
「……ハル、散歩行くか?」
「うん……」
ハルとショコラは珍しく2人で草原の周りを散歩することにした。
「にしても長い間いるのに一緒に散歩するのはホントに初めてだな」
「ね、すっごい不思議な気分」
今2人は草原の真ん中の森近くの方をとことこ歩いていた。ショコラはハルの方を向いて続きを話した。
「そういえば、あの後にルビィとサフィを喚んだよな。今までこっそり掃除してたけど」
「うん。サフィもルビィもとても役に立つメイドさんだよ」
「だよなー、特にオマエは感謝しても仕切れないよな?」
「アハハ、そうだね」
森近くを通ると、2人はあるものを見つけた。それは見事になぎ倒され、未だそのままの状態になってる木々達だった。
「ほら、見ろよこれ。オマエがやったやつじゃん」
「あーホントだ……。で、その影響でクレセがやって来て」
「レイラもやってきたんだよなぁ……」
「あの時はサフィがレイラさんの弟子になるとは思わなかったなぁ……」
「サフィはあー見えて器用だからな」
「クレセも日に日に強くなってるし、レイラさんの薬もいい感じに売れてるからな」
2人は森の木を見ながら談笑する。ハルは思いだしたように次を話したのだ。
「あ、そういえば、クロエとセレネはここで会ったんですよね。実はクロエは呪い持ちで」
「そうだったのか!?」
「はい、何でも左手で触ったものは一瞬で全て亡くなるという」
「とんでもねぇーなそれ」
「はい、本の知識借りて解呪したんですよね!」
「へぇー……あの屋敷にそんな本が……」
「はい。まぁ悪魔国に行ったときその悪魔を殴ってやろうかと思いましたけど」
「何で?」
「何でも先祖と悪魔との契約だったそうで」
「へぇー……」
クロエの意外な過去とハルの黒い面を垣間見たショコラ。2人は歩きながらまた別の所へ向かった。
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