第十六章「雪、騒がずにはいられない」
85.雪とショコラと引きこもり
鬼達の襲来から少し経った後年も明け、そしてそこからある程度経った頃。既に外は寒い冬模様になっており、きたかぜがぴゅーぴゅーと吹いていた。
ショコラはその日起床し、カーテンを開けた。目の前には銀世界が広がっており、ショコラはその景色を見て嬉しそうに部屋から飛び出した。向かうはそろそろ起きてるであろうハルの部屋である。
「ハールー! 起きて、雪だぞー……って!?」
「なんですか、ショコラさん。寒いのに雪って」
「いや……何があったのオマエ……」
ショコラはハルの部屋に入って驚いた。ハルは起きていたには起きていたが、布団の中に完全に籠もり、しかもストーブもガンガンにつけているではないか。あまりのことにため息をついたショコラだったが、ハルはショコラに指示した。
「ショコラさん。右から2段目の本棚の上から3番目の棚の左から10冊目の本とって下さい」
「あーはいはい分かったよ……ってコラ!」
本を取った後ショコラは渡すふりをしてハルの布団を剥ぎ取る。突然布団が剥ぎ取られたハルは驚いてベッドから飛び降りた。
「ショコラさん、なんてことするんですか! 冬はこういう暖かいところで本を読むのが最適な過ごし方なんですよ!?」
「ざっけんなオマエ! 雪も積もってんのに外に出ない奴がどこにいる!?」
「それは貴方の偏見でしょうが!」
ギャーギャーと喧しく言い争いをしながらハルはショコラに引きずられるように食堂へと向かったのだ。
さて、朝食後。朝の読書タイムを邪魔されたのが気に食わないハルはブスッとしながら本を読んでおり、またショコラも少し不機嫌そうにハルに聞いた。
「なぁ、オマエって雪見てきゃー綺麗! 楽しー! とかならないの?」
「無いですね。これっぽっちも」
「マジで……?」
「はい」
ハルにとって雪というのは確かに昔はショコラが言うように興奮するものだったかもしれない。しかし、前世でOLを経験しているハルは雪というのは通勤の邪魔というのが感想である。
ハルが雪に対して興奮する事はないと言いきった後ショコラは頭を抱えて恨めしそうに言った。
「まっーたくオマエはとにかく読書なんだな」
「大体それ目的ですから」
「と言うわりに今読んでるのが『簡単にできる雪遊び』って……」
「偶然でしょ、偶然」
「偶然ねぇ……」
とつまらなさそうにショコラは呟いたが、その時、窓からクロエ達が楽しそうに雪遊びをしているのを見つけた。
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