80.お帰り我が家

締結祭も無事に終わった翌日。今日はいよいよハル達が元の家に帰る日だ。

 門の前に止まった馬車の前にハル達はいたがその向かいにはガブリエルやミカエルといった天使国の面々は当然のこと、ルシファーやリリスなどの悪魔国の皆もそこにいた。



 「ハル様、そして皆様このたびはどうもありがとうございました。ぜひまた天使国に遊びに来てくださいね」

 「悪魔国にもぜひ来て欲しいのじゃ」

 「はい、ガブリエルさん。リリスさん」

 女王2人がハルに挨拶し、ハルを抱きしめた。ハルもまた2人を代わる代わる抱きしめ返す。



 「ハル、絶対また来てよね! 今度は前よりももっと本好きになって帰ってくるから!」

 「ルシファー、うん、分かった」 

 「それとこれ、受け取って」

 ハルはルシファーから小さな箱を受け取り、中を開ける。そこにはルシファーがよくつけるヘアピンと同じ物があった。ハルはルシファーの方を見るとルシファーは嬉しそうだった。



 「えへへ、これつけて欲しいなって」

 「分かった、大事にするよ」

 ハルはそう言うと早速そのヘアピンを髪の左側の方につけた。

 つけるとルシファーはさらに嬉しそうに微笑んだ。



 「ハル様、私からはこれを」

 「うん? 何、ミカエル」

 「これ、私の一番お気に入りの本なのです。ぜひハル様に読んで欲しくて……」

 「ホント!? ありがとう2人とも、帰ったら早速読むね!」

 ハルはその本を大事そうに抱えた。ちょっと離れたところでルシファーがすこしだけ睨んでいたがリリスが苦笑して諫めていた。



 ハル達は皆馬車に乗り、御者がそれを確かめると同時にドアが閉まり、馬車は動き出した。




 ハル達は後ろを見ると天使も悪魔も誰彼構わず手を振っており、ハルはまた見えなくなるまで手を振りかえした。


 

 「じゃーねー! 元気でねー!」

 「また会おうなー!」

 「楽しみにしてまーす!」



 やがて、天使や悪魔の姿が遠くなり、見えなくなると、ハル達はここ1週間の疲れが一気に来たのか全員眠り始めた。ハルの腕の中にはミカエルから貰った本があり、髪にはルシファーから貰ったヘアピンが綺麗に輝いていた。



 「ヒヒーン!」

 「皆様、着きましたよ」

 「おーそうか、ありがとう」

 「着いたって、ハル起きろ」

 「ん……」

 ハルは眠い目をこすりながら起き、ゆっくりと馬車を降りた。目の前には草原の上に建てられた屋敷と近くにはレイラの研究所、そして薬草と野菜畑という懐かしい我が家を見てハルは帰ってきたんだと安堵した。



 「それでは、私はこれで」

 「はい、ありがとうございました」

 天界からやって来た御者は馬に鞭を振るうと天界へと帰った。ハル達はその姿を見送ると早速中に入ろうとしたが……。



 「うわっ! さむ!」

 「1週間離れただけで!?」

 「ん? どうした。え? 1週間じゃなくてこっちは1か月!?」

 「はぁ!? 嘘でしょ!?」

 「まじで……」

 天界魔界は1週間だとしても地上は1か月。とっくの昔に季節は冬になっていた。


 

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