32.イケメン魔女は中々非道
「全く、ずいぶんな歓迎だよ。こんな可愛い子達が見てる前でボクを縛り上げるなんてさ」
「悪かったわね、手荒くて。でもアンタみたいなクズを歓迎するほど私も落ちぶれてないのでね」
「ほーん、そんなこと言っていいんだー」
「やる気か?」
「望むところだよ」
2人は杖を出して交戦状態に入ったが、弟子3人が何とかなだめて、落ち着かせる。そして、この中で一番冷静なクロエが恐る恐る聞いた。
「あの……、2人の間柄ってどんな……」
「ボクが唯一落とせなかったひと……かな」
「え!? やっぱりそういう……」
「バカ、ただの腐れ縁よ、それに間違えるんじゃないけどコイツは女よ!」
「え、え!?」
「おい、なんてこと言うんだ!」
いきなりのカミングアウトに驚く3人。女性と暴露されたルチアもショコラに掴みかがるが、どんどんとショコラは暴露していく。
「学生の頃からとにかく同性を籠絡するのが得意でね……彼氏持ちとかそういうの関係無しに次から次へと口説いていったの。しかも同人進行で何股もしたのよ」
「だって、可愛い子はボクの手元に置きたくなるだろ?」
「私がコイツを殺したくなる理由が分かったかしら? 」
「は、はぁ……」
あまりにもとんでないことを聞かされた3人はただ頷くしかなく、全員さっさとこの場から離れたいと心の底から思っていた。
「中途半端な魔力なら私も撃退するのだけど、なんせ成績は私と同格でトップクラス。あげく水晶判定は私と同じ金色だったからね……」
「え!? 自分で魔法が創れるという!?」
「ショコラ師匠と同じ!?」
「そうよ、だからこそ下手なことは出来なかったのよね……」
「ハハハ、いいことじゃないか」
「どこがよ! このバカ!」
ルチアが凄い魔女だと知り、3人は目を輝かせる。その反応にルチアは調子に乗ったが、ショコラはブチ切れ、ティーカップの中身ごとルチアにぶつけた。しかし、ルチアは寸でのところで止め、ショコラの元に戻す。
「ダメじゃないか、ショコラ。ティーカップぶつけてきたら。なんだキミはお茶会のマナーも忘れたのかい?」
「だーれのせいだと思ってんのよ……さっきから人の神経逆撫でするようなことしか言わないんだから……」
煽るように返したルチアにショコラはまた怒りが頂点に達しそうになる。しかし、リリィとマーシャがお茶菓子を多めに取り分けてなんとかなだめた。
「あの……つかぬ事をお聞きしますが……ルチアさんは一体どんな魔法を……」
「精神関与だ」
「精神関与?」
「いわゆる『魅了』や『洗脳』って奴だね。この力を生かしてボクは理想のハーレムを作り上げていったんだよ」
ルチアのとんでもない暴露に声も出なくなった3人。しかし、ショコラがそんな彼女らを慰めるように言った。
「安心しろ、コイツの洗脳は既に何回か解いたことがあるし、仮にオマエらがそう言う目に遭いそうならすぐに言え、コイツを1発ぶっ飛ばすから」
「そうなんだよなぁ……あと一歩のところでだいたい邪魔されるんだよなぁ……」
「そう言う事するからだろうが! 全くオマエのせいで国が滅びかけた事があるんだぞ!?」
「いいじゃないか、滅んでないんだし」
「あっきれた……まさか全く変わってないとは……」
悪びれもせず、コーヒーを飲むルチアにショコラはただ呆れており、壁の方に頭をぶつけた。ショコラは慰めようとする3人に力無く笑い、こう言った。
「ゴメンな……巻き込んでオマエらもここから出ていいぞ……」
「あ、いえ、はぁ……」
「私のことは気にしなくていいからな……」
「はい……」
ショコラにそう言われ、3人は退室した。何とか気を取り直したショコラはこの様子を見ていたルチアに向き直る。
「全く師匠になったのに情けないなぁ」
「誰のせいで!」
「ま、あの3人を追い出したって事はそろそろ本題に入るって訳だろ?」
「まぁ、そう言う事よ。まずはこれを見て」
ショコラは自分のポケットから一枚の紙を取り出す。それは森で怒ったモンスター騒動を取り扱っていた。
「本来ならまず起こらない森の大騒動。リディルの捜査官は見逃した魔石のかけら。そのかけらから微量に感じる魔力。これ、アンタが起こしたでしょ?」
「さーすが、ショコラ相変わらずと言うか何というか……」
「ふん、白々しいわね。どうせ遠くから捜査官に何らかの精神操作をしてわざと見つからないようにしたでしょ?」
「まぁね、でも正直キミのことは賭けだったよ」
「嘘つけ、どうせ私が来ると思っていたくせに……」
「あ、バレた?」
やはりまだ悪びれずに揶揄うような態度のルチアにショコラはブチ切れた。
「何でこんなことをしたのよ!」
「決まってるだろ、そろそろ構って欲しかったんだよねぇ」
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