25.退治完了!

 「クッソ、中々通りませんね」

 「デカい上に堅いと来たか……」

 「斬りつけてもピンピンしてるなんてな!」

 「強い……」

先程から4人は巨大樹の討伐に勤しんでいたが一向に倒れる気配は無い。寧ろ先程までの攻撃が全て効いていないような感じだった。

しかも、悪いことは続くものでハル達は衝撃の事実を知ることになる。



 「なあ、おい、あれって……」

 「そんなことってあるの!?」

 「コイツが原因か……」

全員、大樹の根の方を見る。そこにはたくさんの植物や動物が捕らわれており、しかも多くの魔力を注がれていたようだ。

魔力を多く注がれてたせいで暴走し、モンスターと化していたのだ。



 「どうします、これ?」

 「とりあえずまずは大樹の討伐だ。また森に結界を張っておくからそいつを優先しろ」

 「了解!」

ショコラはまた森に結界を張り、モンスターが逃げ出さないように対処する。他の3人も大樹に攻撃を集中させるが、中々倒れない。

 そんな中ハルはある一点に気づいたのだ。



 「ショコラさん、この木から何か闇の魔法の何かを感じるんです」

 「闇の魔法の何か?」

 「はい、例えるなら無理矢理暴走させたとか……」

 「……なるほど確かに」

 「オイ、何ごちゃごちゃ話してんだ!?」

 「大分攻撃が激しくなってます!」

ハルは大樹が何者かに操られていることに気づき、ショコラに話す。大樹の猛攻は止まらず、防御のために張った結界もそろそろ壊れそうになっていた。



 「とりあえず、浄化魔法をかけるので、そこから皆さんでとどめを――」

 「いいから早くしてくれ! そろそろマズいぞ!」

 「分かりました!」

 「来る!」

大樹の枝の一本が結界の方に向き、それと同時に結界が割れた。瞬間、ハルは浄化魔法をかける。すると大樹はうごめき苦しみだしのだ。



 「効いてる……!」

 「おし、これならいけるぜ!」

 「とどめだ!」

 「おりゃああああああ!」

 「はああああああああ!」

浄化の魔法を喰らったことでダメージが通りだした大樹に4人は一斉攻撃を仕掛ける。

ナイフが、剣が、魔法が、全てが大樹に向かう。一斉攻撃を喰らった大樹はようやく大人しくなり、モンスターとしての姿も無くなった。



 「……にしてもすごい眺めね」

 「とんでもないお化け木だったな」

 「まさか、森が集まってこんなことになってたなんて……」

 「今でもここに住んでたらと思うと……ゾッとするわ」

 「……確かに」

何とか大樹を大人しくさせた4人はこのモンスターの正体を見て、驚いた。大樹は森全体で出来ており、そこに生えていた木や動物たちも無事解放された。安堵する3人とは正反対にショコラは何か考えていた。



 「ショコラさん、どうしたんです?」

 「いや、もしかしたらこれ誰かが起こしたんじゃ無いかと思ってて」

 「え、でも普通に犯罪? ですよね」

 「まぁ罪には問われるな。にしても誰だ……? アイツか?」

 「……? ショコラさん?」

 「いや、何でも無い。こっちの話だ。森の件はまた後にして、今は目の前のこれを片付けようか」

ショコラの意味深な呟きにハルは反応したが、ショコラは無理矢理笑顔になって誤魔化す。その様子にハルは違和感を感じたが、すぐに屋敷の方に向かった。

 そこではレイラを始めとした残りの4人が負傷した動物たちの手当てに勤しんでいたのだ。



 「あ、皆さん。お疲れ様です」

 「大丈夫ですか? ここにハーブティーや朝食をご用意してますので」

 「ありがとう。でも今はいいかな」

 「レイラ達もお疲れ様。手伝おっか?」

 「いえ、そんなこと! 戦えない私達に出来るのはこういうことだけですから……」

 「充分だよ」

 レイラたち4人はれいらのぽーしょんや知識を生かし、動物たちを手当てしていた。そのかいあってか大分回復していたが、レイラは少し悲しげな顔をしていた。



 「救える命はできるだけ救いたいのですが……」

 「一部、既に手遅れの子が?」 

 「はい。でも不思議なんですよね」 

 「え?」

 「無事な子はあまり魔力は感じませんが、亡くなった子はなぜか少しだけ魔力がある気配がして……」

 「それって……」

どうやら一部間に合わなかった動物もいるらしいが、その言葉を聞いたショコラ達は顔を見合わせる。そして、亡骸の方に近づくと微かだが、確かに魔力を感じ取れた。その様子を見てハルは察する。



 「まさか、生粋のモンスター!?」

 「そんなバカな。ここではまず発生しないぞ!? やはり後で独自に調査してくるか……」

 「まぁ外に出てない私が言うのもなんですが、確かにいませんもんね」

 そう言ってショコラはまた考え出したが途端にハルがそれをぶち壊すようなことを言った。



 「じゃあモンスターのお肉が食べられるって事ですか」

 「……はい?」

 「こういう獣型って美味しいってショコラさん言ってましたよね」

 「……まぁそうだな……」

 「食べてみたいんですよね、こういうの」

 「……お前正気か?」

 「至って健全ですよ」

突拍子も無いことを言い出したハルにショコラは頭を抱える。誰かコイツを止めてくれと心で懇願したショコラだが、しかし周りのメンバーは乗り気だった。



 「いいね! 外でやるバーベキュー美味しそう!」

 「一度やってみたかったんですよね」

 「動物の処理なら任せといて下さい」

 「セレネさんホントなんでも出来ますね」

 「じゃあ必要な道具とか揃えようか」

手当てしながらすっかりわいわいと話す屋敷の住民達に呆れながらもショコラは微笑ましそうにその様子を見ていた。

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