タイトルなんてねえよ

伊勢州 静

第1話 1月1日

1月1日1時40分、僕は起きていた。ちょうど年越し生放送を見ていて、その余韻と夜の静けさに考え事をしていた。この歳になってまだ僕は誰かと一緒に年を越したいと思っている。この想いが許されるのだろうか。ああ、また僕は独りではいられない臆病なやつなんだ。そう自覚した。なにせ、ひとりぼっちのくせに、その癖を紛らわせるためにニヤニヤ生放送をつけずにはいられなかった。だれでもいい。誰でもいいから声が聞きたかったのだ。なんて独り善がりな言葉なんだろう。顔も名前も知らない他人の「あけおめw〜」が聞けて嬉しかった。ともだちのいない僕にはそれが救いだった。時が過ぎるだけで嬉しくなれるお正月だった。もしかしたら、そうはなれない場合もあったのだから悲しみと歓喜の狭間から抜け出せて良かったよ。

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