真実に晒されて




「贄波璃々」

「お前は本来」

「贄波瑠々の術式になる筈だった」

「能力も性格も」

「祓ヰ師としての心構えも」

「全てが劣るお前が」

「瑠々の為に死ぬのが運命であった筈なのに」

「しかし、何の因果か」

「お前は、贄波瑠々のフリをして」

「生贄の儀から逃れたのだ」

「だが生贄の儀は」

「死ぬよりも辛い悔恨に至る」

「我々贄波家は」

「死した片割れの憎悪の声に溺れながら生き続けるのだ」

「その憎悪が常に耳元で囁かれる……」

「そうすれば、精神は崩壊し」

「自分自身を傷める真似をしてしまう」

「けれど……お前は」

「瑠々の禍憑から逃れる為に」

「自身に対する契りを結んだ」

「無能なお前が自分が生きても良い理由を作る為に」

「〈完璧な祓ヰ師であり続ける〉契りを結んだ」

「その結果」

「自分自身の記憶を封印し」

「そして記憶の改竄を行った」

「罪悪感を軽減させる為に」

「何の能力も無いお前は選ばれた存在だと誤認した」

「契りの効果は絶大で」

「お前の中にある〈ソノコ〉すら」

「お前を姉と認識してしまい」

「従順になる程に………」


「ふ、ッあ………」

「そん、な、私は……」


「あぁ、可哀そうな瑠々」

「お前の契りによって」

「呪いの効果が歪んでしまった」


「ぇ、わ、たしの……」


「元来、禍憑は就いた者を呪う」

「祓ヰ師はその禍憑から神胤を生成する」

「〈完璧な祓ヰ師であり続ける〉」

「その契りに感化された瑠々は」

「その反対の解呪方法」

「〈贄波璃々が一般人として生きる〉事に変わってしまった」

「そうすれば、永遠に解呪する事は出来ず」

「お前の支配下に置かれ続けるからねぇ」

「けど」

「あの事件の時」

「何かが要因でお前は祓ヰ師としての皮が剝がされた」

「それによって瑠々の呪いが解呪途中となり」

「禍憑を使役する屍子流傀儡術式が使えなくなったのさ」


「はっ……はっ………はっ」


「おや……どうしたんだい?璃々や」

「動悸が激しくなってる様子さね」

「……あぁ、雨が降ってるねぇ」

「そうそう……璃々」

「お前があの子を見捨てた時も」

「丁度、こんな天気だったさねぇ?」


「ひっ――――」

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