怖い隠し


「はぁ」

「本当に」

「何処にいるのかしら?」


「……あのさお嬢」


「なによ、八峡」


「いや……これ言ったらさ」

「確実に反発されるだろうから」

「言おうとはしなかったけどさ」

「けど、いや、言うべきだと思うから言うわ」


「だから、何よ?」


「……怖かったら手ェ握ってやろうか?」


「はぁ?何を言ってるのかしら貴方」

「私が怖い?そんなワケ無いじゃない」

「大体ね、私が一緒に行こうと言ったのは」

「貴方が心配だからに決まってるでしょう」

「現状貴方の方が経験が少ないのだから」

「一応何年も祓ヰ師をしている私が居た方が」

「安全に決まっているでしょうに」

「だから一緒に居るの」

「これは生存確率を上げる為でもあるのよ?」

「分かったかしら?」


「あー、はい、分かりました」

「だからホラお嬢」

「手ェ貸せよ」


「全然分かって無いじゃない!!」


「いや、さ……」

「お嬢さァ」

「怖くないってんなら」

「俺ん袖持つの止めてくんね?」

「歩き辛いんだけど」


「……これは、あれよ」

「貴方袖のボタンが外れてるから」

「見えない様に隠してあげてるだけよ」


「夜中だぞ今ッ」

「しかも結界師さんらが隔離してるんだぞ!?」

「人なんざ会わねえよッ!」

「いや……そもそも」

「多くの人間は袖のボタンが外れても気にしねぇよ!!」


「気になる人が居るかもしれないでしょ!?」


「つか絶ッ対ェ」

「ボタンなんざ外れて無いだろッ」

「おら、袖から手ェ離せッ!」


「ふんっ!」


「あぁああ!俺のボタンがァ!」

「お、お嬢、それ、ブチりやがったなぁ!?」


「いや、これは最初から外れてたの」


「ブチッつったの聞こえたんすけどォ!?」


「あぁ畜生……」

「何が悲しくて袖のボタン外さなきゃならねぇんだよ……」


「ほら見なさい」

「貴方は袖のボタンを気にする派じゃないの」


「そりゃ気にするだろうがッ!!」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る