縮地禁止令



「くはッ」

「く、ッ……」

「まさ、か」

「お前が、ここまで強い、とはな」


「えへへーそうでしょー?」

「ボク、こう見えて強いんだからっ!」

「っとと、お兄ちゃん」

「胸、抑えつけて大丈夫?」


「あ?あぁ」

「問題ねぇよ」


「そっか」

「でもすごいねお兄ちゃん」

「なんか、瞬間移動出来るんだ!」


「あ?そうだろ」

「これが俺の出来る唯一だからな」


(黒輩に攻撃を察知する能力)

(そして……縮地)

(なるほど、出来る事は出来る)

(……けれど)

(未完成、と言う部分を除けば)

「八峡くん」


「あ?」

「はい、どうっした照さん」


「キミのその禪域」

「恐らくは縮地、だろうね」


「はい、どうすか?俺の縮地」

「俺が扱える技術の中じゃ」

「いっちゃん凄いと思うんすけど」


「……単刀直入に言おうか」

「八峡くん」

「縮地を使うのは止めなさい」


「……あ?」

「それ、なんでですか?」


「なんで」

「そう、疑問を浮かべるだろうね」

「一応は理由があるんだよ」

「縮地は心拍数を極端に上げ」

「意識を別の場所に移す事で」

「その距離分の移動を零秒で行う」

「行動のショートカットだ」

「ここで縮地を扱う場合」

「一番負担が掛かるのは心臓だ」

「それでも」

「生活する上では支障はない」

「けど、キミの縮地は違う」

「キチンと教わらず」

「見様見真似で体得したんだろうね」

「行動が早く感じたのは」

「恐らくは縮地をする際に生まれた副作用なんだろう」

「心臓を加速させる」

「キミはその行動を、通常の縮地よりも長く行っている」

「通常の一回分を」

「キミは四回か五回分の負担を掛けているんだ」

「そうなれば肉体の負荷は通常の五倍」

「連続して使用すれば、日常生活にも支障が出る」

「最悪、縮地の酷使で」

「キミの心臓が破裂して死んでしまう可能性もある」

「だから、縮地を使ってはならない」


「……じゃあ、どうすりゃいいんすか」

「俺に、これ以上の技術は無いんすけど」


「だから、それ以外を教えよう」

「キチンとした用途で」

「私が、キミを導こう」


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