一方その頃贄波さん家


「……は、っ、はッ」


「お嬢様」

「少し休憩でも」


「黙って頂戴」

「集中が切れてしまうわ」


「………」

(お嬢様の術式が使えなくなって五日目)

(まだ、術式〈ソノコ〉が現れる様子はない)


「はッ……はッ……んっ」


「お嬢様」

「あぁ、お嬢様」

「お願いです」

「少しだけ休息を」


「はっ……は……」

「界守……私」

「一瞬、意識が……」

「はっ……ダメ、ね」

「ありがと……界守」

「……はぁ……あぁ」

「貴方の体……少しだけ」

「柔らかいのね……」


「んっ」

「お嬢様」

「今はそう言った冗談はおやめください」


「……なによ」

「普段は私にセクハラをするくせに」

「こういう時だけは」

「真面目ぶっちゃって……」


「命の危機に関わります」

「そうなれば冗長な事など言える筈も御座いません」


「けど……大丈夫……だから」

「もう少しだけ、術式を……」


「なりません」

「今日はもうお休みにします」


「なに……あなた」

「ご主人に、逆らうつもり?」


「えぇ、逆らいますとも」

「象形術式「縛」」


「ッちょっと」

「術式を使ってッん」


「こうでもしなければ」

「無理をなさるおつもりでしょう」

「さあ」

「このまま運びますので」


「ちょっと」

「せめて、このッ」

「亀甲縛りは止めなさいなっ!」

「ん、振動が、擦れッ」

「あぁ、もうっ!」

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