天臨冠戦


(……どうしましょう)

(まだ)

(八峡に何を言えば良いのか……)


(何か適当な言葉……)

(いえ、それはダメ)

(彼を傷つけてしまう)

(仮初の救いを与えてしまう)

(ちゃんとした道を)

(指示さないと)


『俺は、無価値にはなりたくねぇ』

『だから、必死こいて』

『自分の価値を得ようとしてんだよッ』

『それを、邪魔してんじゃねぇ!!』


『貴方は』

『自分自身の命の価値すら』

『見出せないのかしら?』


『無価値は価値ある者の為に死ぬ』

『それがお嬢の言葉で得た俺の価値観だ』


『貴方には』

『もっと別の道を』

『他の価値観を与えるわ』

『だから選びなさい』

『貴方が目指す道を』


(考えても)

(考えても)

(適切な道は見つからない)

(貴方は何を求めているのか……)

(それが、分からないの)

(違和感が拭えないの)

(貴方が本当に欲しているのは)

(自分自身の変化なのかしら)

(もっと、単純な事じゃ……)

(無いのかしら)


「……」


「……?」

「子供?」


「「「地獄じごくどう」」」


(何か)

(投擲を)

(崩さなければッ)

(取り返しの付かない事ッ)

(早く、なんでもいいッ)


「「「孤獄こごくことわり」」」


(あ)

(んだよ、コレ)

(なんなんだ……これッ)


「〈ソノコ〉ッ!!」


「「「無間むげん独獄ひとま淵境えんきょう」」」


(しまッ―――)


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