お別れの挨拶


(雨は、少し)

(苦手だね)

(止まない雨は無い)

(その通りだとも)

(けれど)

(雨は終わらない)

(今と言う雨が終わり)

(また、新しい雨が降れば)

(ボクは、その雨の日に)

(苦手なのだと、呟くのだろう)


「おい」

「イヌ丸」


「やあ」

「我が友」


「お前さ」

「実家、帰るんだって?」


「あぁ」

「だから我が友には」

「挨拶をと思ってね」


「色々と世話になった」

「ボクはキミと出会えて良かった」


「………それよりさ」

「お前にやったそれ」


「あぁ、このピアス、かい?」


「悪いけどさ」

「それ、返してくんね?」


「あ……あぁ」


「今じゃねぇよ」


「帰って来るんだろ?」


「あぁ……そうだね」

「そうだとも」

「ボクは我が友の元に帰って来るよ」

「何があろうとも」

「どの様な事があっても」


「ありがとう」

「我が友よ」


「あぁ」

「早めに帰って来いよ」

「じゃねぇと」

「気が変わるからな」


「我が友」

「勝手で悪いが」


友と同じ程に大切な肉親の名を告げた。

その内容は八峡義弥ですら予想外で。


「ボクが帰って来るまで」

「―――我が妹の面倒を、見てくれないか?」

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