【ZAW2期】ZurAndernWelt -争いの物語-

風詠溜歌(かざよみるぅか)

第一章 いずれ交差す運命

1.ツーランデレンヴェルト

プロローグ

 継ぎ目のない水晶で造られた遺跡。


 静寂。


 透明な台座に横たわった青年。星屑のように輝くその髪は人ではない何者かのように長い。


 琥珀のように澄んだ瞳が長いまつ毛の下から現れ、朝露に濡れて咲いた花の如く、ただ美しく輝いていた──。




 ********





 その日、栗色の髪の女性はバスに揺られていた。

 連れはよく似た顔の二人。この国ではまだ珍しい、金色の髪に青い瞳をした彼らは双子。三人は水族館から家路に着く道中だ。

「ねぇ結衣菜ちゃん。このバス、どこまで乗るのー? あたし、もうお腹すいちゃった!」

 元気な声を上げた妹のフウに、結衣菜はもう少し、と言葉を返す。その隣から小さくつぶやく声も聞こえた。

「……食いしん坊」

「あ、ユウいま悪口言ったでしょ! 食いしん坊じゃないもん!」

「……事実じゃん」

 あまり煩くなるようだったら止めよう。火に油を注ぐような悠を横目に見ながら、保護者である結衣菜はバスの外を眺めた。双子は喧嘩を始めたようだが、彼らにとっては──結衣菜を含めて、日常茶飯事のことだ。

 ふと、胸元に下げた竜のペンダントに目が移る。

 その目に嵌め込まれた緑色の宝石が窓から差し込む光を反射して輝いた。

 結衣菜は忘れられない体験のことを思い出す。あれは彼らと同じぐらいの時分だったか。まだ中学生である幼い二人を見ながら、結衣菜は懐かしい顔のことを思い出す。

 彼らはどうしているだろうか、再び会えたなら……。

 突然の衝撃。口喧嘩が激しくなっていた双子は、顔を見合わせて驚いていた。

「な、何?」

 バスはまだ動いている。が、蛇行を繰り返し今にもどこかに衝突しそうだ。先ほどの衝撃はどこかに擦ったのだろう。

「運転手さん、倒れてる……」

 風が呟いたと同時に、大きく車体が揺れるのを感じた結衣菜はとっさに二人を抱きしめ、衝撃に備える。

 次の瞬間、彼女は緑色の光に包まれていた──。

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