第60話 奥の部屋
「いよいよだな」
「ああ、さすがの俺もゾクゾクしてきたぜ」
ラックとガルフの表情も明るい。カノンも期待に胸を
カノンはゴクリと
モンスターや障害物に
どれだけ歩いたのか記憶もぼんやりして来た頃、ようやく目に見える行き止まりに先ほどと同じ扉が見えた。再び勇者の印が反響して扉が開く。何の疑問を抱くこともなく一行が通過すると、先はドーム型の小部屋になっている。そして中央に小さく丸まっている生き物がカノンの目に留まった。
「い、イヌ?」
「イヌだな」
「イヌに違いねえな」
「イヌですね」
四者がほぼ同時に、
「グアアアアア!!!」
「カノン、しっかり」
ミラがカノンの額に胸に押し付けて抱きしめる。ラックとガルフが「あわわっ」「ケッ」と声を発したのは聞こえたが、カノンには柔らかな感触を
気を失ったような感覚から我に変えると苦痛は止まっていた。様子の変化を察知したミラがようやく胸からカノンの額を解放し、まるで未熟児をあやすように優しく頭を
おそらくミラを含む一行に、カノンが純然たる勇者でないことは悟られているだろう。しかし、今のカノンにはもはやそんなことはどうでも良くなっていた。仲間たちの存在が、ただただ心強かったのだ。
もちろん断片的ながら記憶に残る魔王としての使命を忘れたわけではない。行く行くは袂を分かち、
「イヌ、いつ起きたんだ?」
「とっくに起きてるだよ」
イヌのそばに寄っていたラックが背中の横をなでると気持ちよさそうにしている。それにしても小さい。
カノンがそう思いながら
「何だいきなり?」
「オヤジが勇者シャインの仲間に加わってから何ヶ月かして、ガルフの街に戻ってきたんだけどよ。その時に小さなイヌを連れてて、それがコイツとそっくりだった」
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