罅割れの空は綺麗だ

目深に被った帽子から

見える風景は平坦だ

息切れするほどのマスクの湿り

歪む視界に空を見上げる

昔から好きだった

靴を見てから前を見て

頭上を見れば空がある

晴れた日の青は素晴らしく

薄い雲があれば、もっといい

しかし、青には感動しない

青にかかる黒の線

青にかかる木々緑

電線と民家から溢れ出た幹と葉

それが、とても美しい

薄い青に電線の線が罅のように重なる

視界の隅から深緑が首を出す

この綺麗さをなんと表現すべきか

日常のひとひらの世界は

誰もが見ているはずなのに語りもしない

当たり前だから口にしない

だから、この美しさを口にするなら

やっぱり「きれいだなあ」と

青にかかる異物も含めて

きれいだなあ、としか言えず仕舞い

遠くに生ける気がするのだ

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