バードが言う

マイグレイティンのバードが言う

飛び立つ奴を好いてもさ

ほかでイイことしてんだよ


イーゴルは餌を加えたまま

必要な時に必要なものさえあればいい


アウルは目を細めて

寝ていると全て忘れているんだよ

解決はしていないけどね


クロウは羽を広げて

おれぁは自分の生き方を悪く思っちゃいねえ

ただ世間様がおれを認めてくれねえだけだ


スワーロウは言う

もう少しで雨が来る

早く帰るといい


ピジェンとフェゼントは顔を見合わせた

いやあ、たまに狩り場に顔をだしちまって

仲間が死ぬんだけどさ

人間も同じことしてるだろ?


ウッドペカーは寡黙に木をつつく


キャネーリ、ロビン、ラーク

スワン、ヘロン、クレイン

シー・ガル

山も草原も港まで僕らはいるさ

たまに餌付けしてくる奴もいるけどさ

僕たちは誰か一人に愛されたいと思う

同胞への愛もある、でもそれ以上に愛されたいと思う

だから、卵を育てる以外のことをしてみたい


アイビスは名前を呼んだ瞬間に顔をしかめる

どこでもあそこでもいいけどさ

種類がなんだとかいいんだけどさ

死んだやら絶滅やら手厚い保護ってやつ?

あれ、するだけ無駄よ

アルバトロスの話を知らないの?


アルバトロスは優しく寡黙で人間に笑いかける

阿呆鳥であった。私たちは、その笑顔を知らない

そして殺される時の断末魔を知らない


もうこの話はおよしよ

火の鳥が悲しそうに舞い降りて

唯一、鳥の言葉がわかる私に言う

「なにも変わらないの。狩りの仕方、頭数調整、私たちを食べるもの、循環しているのだわ。

ねえ、でもねえ、貴方、どうしてアルバトロスの話をしたの? もう、いないのに」


……火の鳥殿、世界は進歩していきます。このまま禁忌の類いまで生きましょう

そして体の全ての謎を解き明かして、絶滅した種を蘇らすのです


「なんていう傲慢」

いいえ、空を飛ぶ数々の鳥が見たいだけなのです

火の鳥よ、やはり世界は一回は絶滅した方がいいのですか?


「知らないわ。とても知らないわ。貴方たちの運ですよ」


バードは言う

明日も明後日も今も貪り、貪られ、世界に真理に乗っ取って

愛など知らず、恋だけ知って、子をなして

続く、続く、続いていく

……人間の方が先に滅亡してしまうだろう

そんな薄水色の空に飛ぶ鳥は「ひゅろぅ」と鳴いて飛んでいた

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