世界を制覇したみたいです
「うーん、ここはどこだ?」
眠りから覚めた俺は、まだ覚醒しきっていない意識で辺りを見渡す。
そこは2か月もの間、奴との戦いを繰り広げた、見慣れた場所だった。
なんとなく、奴の最期を思い出すと、あの2か月間はすごく無駄な時間だった気もするが・・・
(そういえば、怪物が自爆したんだったか)
ゆっくりと起き上がって、身体に異常がないかを確認する。
すると、奇妙なことに気づいた。
今まで感じたことのない力を感じる。
(これは魔力? 地球と魔力の質も違うのか)
それは慣れ親しんだ地球の魔力とは違うが、どこか似たようなものを感じる。
そして使い方もわかる。
――魔法が使える!!
俺はそう思い、色々試してみた。
結論から言うと、できないことがなかった。
空も飛べたし、炎の弾を撃ち出すこともできたし、瞬間移動まで可能だった。
(こっちの魔法、応用効きすぎだろ・・・)
流石の俺も、瞬間移動ができたのには驚いた。
しかし、これで戦いの幅が広がった。
ついでに敵を探知する魔法を創れないかと思っていろいろ試行錯誤していたのだが、魔力を広げるイメージをしたらそれらしいものができた。
今後これを魔力探知と呼ぶことにする。
グゥ~
色々考えていたら、お腹が思い出したように空腹を訴えた。
俺は、ドロップアイテムの肉塊があったのを思い出す。
(これを食うしかないか・・・)
俺はそう思いながら、すぐ横にある肉塊を見た。
俺は覚悟を決めた。
調理道具はないので魔法でそれをいい感じの大きさに切って、火の魔法で直に炙ってみる。
火を通し始めると、すぐに油が滴るように滲み出て、肉特有の美味しそうな匂いが広がった。
モンスターの肉だと思うと、嫌な気分にならなくもないが、そんなことも言ってられない。
いい色になるまで待った後、俺は思いっきりかぶりついてやった。
――パリッ!!
「うまい!! これがあの化け物の肉だと知らなければ、いい金出して買う人がいてもおかしくないな」
想像以上にうまかった。
久しぶりにまともな食事にありつけたので、美味しく感じるのもあるかも知れないが、いずれにせよ、満足である。
俺は食べきれなかった肉塊を見て、どうしようかと考えていたが、魔法で収納できないかと試してみたら、異空間に収納することができた。
今後この魔法はアイテムボックスと呼ぼう。
アイテムボックスに肉塊と転がっているお金をしまって、辺りを見渡す。
(改めて見ると、横穴がたくさんあるなぁ)
ここに来て以来、ほぼずっと同じ穴の中にいたせいで、ちゃんと探索したことがない。
よし、ここらを探索してみよう。
探索には危険も伴うが、仕方がない。
多分、モンスターはあいつだけってわけじゃないだろうが、あいつを倒したことで身体能力も格段に上がり、魔法も使えるようになったから、それなりに強くなった自信もある。
油断さえしなければ死ぬことはないだろう。
俺は2ヶ月もかけて、ようやくこの場所から前に進むことができた。
(待ってて姉さん。絶対、迎えに行くから!!)
――1年後
この世界に飛ばされてから、1年が経った。
まず最初に、
俺はこの世界を制覇してしまった。
順を追って話そう。
この1年間でこの世界の色々な情報を集めた。
この世界を色々みて回る時に、どうしても理解できない事柄が山ほどあった。
それを説明してくれる魔法が欲しいと思って創ってみたのが、鑑定魔法だ。
これが便利なもので、対象はモンスターでも物でもなんでもできた。
それに名称はもちろん、わからないものは全て解説してくれる。
それからは、一気に情報が理解できるようになった。
この時ほど、魔法の応用力の高さに感謝した時はないだろう。
まず、この世界には魔法の他にスキルというものが存在する。
魔法は魔力を使って、現象を引き起こすもので、スキルとは先天的、後天的を問わず、保有している自分の能力を
魔法は想像力によって、どんな現象も起こすことができるが、より高度な現象を起こすには、多くの魔力が必要だ。
魔法は地球でも使っていたから、ある程度応用が効いたのは助かった。
それに、俺は保有する魔力量が多いらしく、今まで魔力切れを起こしたことはない。
油断は禁物だが、魔力切れを気にして、魔法を使い渋る必要がないのはありがたい。
次にスキルだが、これに関してはあまりよく分かっていない。
ここには俺しか鑑定をする対象となる人がいないので、確かなことは言えないが、これはいわゆる努力でどうにかなる技術的なものではなく、超能力的なものであると思う。
例えば、俺は戦いの中で剣術を身につけたが、スキルとして現れることはなかった。
そのかわり、俺が所有しているスキルは『地球魔法(実際は魔法と書かれているが、この世界の魔法と区別するために便宜上こう呼んでる)』と『イタズラ好き』というわけのわからないスキルだった。
確かに昔からイタズラは好きだったし、よく成功するなと思ってはいたが、あれは無意識にスキルという超能力的な力が働いていたらしい。
もしかしたら、地球で特技とか超能力とか呼ばれているものも、スキルだったのかもしれない。
それらのことから、俺はスキルを何かしらの条件を満たすと自動的に発動する、超能力みたいなものだと思っている。
というわけで、この世界にはどうもファンタジー要素が多分に含まれているらしい。
それ以外にもわかったことはある。
この世界はそんなに広くない。
というのも、俺が飛ばされた場所は洞窟のような場所だったが、探索していると上にも下にも伸びる、大きな階段を見つけた。
そこで俺は、この世界がいくつもの階層に分かれていると知った。
そこから下に行けば行くほど強いモンスターが現れ、上には弱いモンスターが多く、動物や魚など、モンスターではない生き物もそれなりにいた。
しかし、ひと階層は1つの街くらいの広さしかない。
中には、無限に広がる森みたいな階層もあった。
しかし、そのどこまでも広がる景色は、なんらかの魔法による幻影だった。
実際の広さは他の階層と変わらない。
どこかで見えない壁のようなものに阻まれてその先へは進めない。
そんな閉塞的な空間は約百層にも及んだが、探索を始めた当初から魔力探知で1階層なら丸々把握できたため、探索し切るのにそう時間は掛からなかった。
最上層から最下層までの面積を全て足しても、東京都くらいの広さにしかならないのだ。
それがこの世界の全てだった。
最下層に近づくと、モンスターも比例して強くなっていった。
それこそ、最下層にいたモンスター達は、正真正銘の化け物だった。
それまでの敵は、何かしらの攻撃手段でダメージを与えることが可能だったが、そいつには何をしてもダメージを通すことができなかった。
そいつらを『鑑定』の魔法でみたら、『絶対無敵』というスキルを持っていた。
「なんだよそれ」と思いながら、その見るからにチートスキルなそれの解説を見ると、〈この世界に存在するあらゆる攻撃(間接的な攻撃を含む)を無効化する〉
というものだった。
それを見て俺は閃いた。
地球魔法ならいけるのでは?と。
そしてその予測は正解だった。
この世界の魔法が異様に使い勝手がいいこともあり、ここに来てから長い時間、地球魔法を使わなかったため、出力がだいぶ下がっていたが、小さな傷をつけることができた。
傷さえつけられれば、こっちのものだ。
つけた傷に、地球に存在するバトラコトキシンという毒を塗ってやった。
バトラコトキシンとは、猛毒吹き矢ガエルという種のカエルが持つ毒で、青酸カリの約4000倍の強さの毒だ。
流石のモンスターも3分ほどで動かなくなった。
この毒は、俺の家に伝わる護身魔法(地球の)で作り出したものだ。いま考えると、我ながら恐ろしい魔法だと思う。
そのモンスターを倒した後、大量のお金とスキルを得た。
そのスキルの名は『無敵無効』。
もう突っ込む気も起きない。
こうして俺はチートスキルを破る、チートスキルを獲得したのだ。
このスキルのおかげで『絶対無敵』スキル持ちのモンスターも、この世界の魔法で倒せるようになった。
その時くらいから、この世界に俺が倒せない敵はいなくなった。
そんなこんなで、俺はこの世界を制覇したというわけである。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます